妙な夢をみた
映画のような夢だった。
ある日牧歌的な小さな町の空に紫色の円形の空間が幾つも出現した。まるでUFOか何かのようにみえる。
あわてて逃げようとした。
しかし,気づくとすぐうしろに褐色の肌をして目がぎょろりとしており,腰布を巻いただけのインドの苦行者のような者がおり,見つめられると身動きできなくなった。
地面に横たわった私の頭の手をかざし,にやりと笑って,「合格だ」と言った。
気づくと灰色のスーツを着た女性がいる。促されるままに手をつないで農道を歩いていくと,同じように二人一組の人々が行列になり歩いている。農道の向こうの別の農道と交差する場所の上空あたりに紫の円形の空間がぽっかりと口をあけている。
彼女は,「感じたら離れ離れにならないように私の手をしっかりと握りなさい」と言う。
手をつないだまま更に歩いていくと,すっと無重力状態になったような感じがしたので彼女の手をぎゅっと握り締めた。すると,その紫色の空間の中に吸い込まれてしまい,瞬時にして昔の東南アジアのカリフの宮殿のようなところにいた。
このようにして異次元の世界に連れ去され・・・そして,実にいろんな出来事を体験した。
パラダイスと逆パラダイスが同居するような不思議な世界。極彩色でありかつ淡色でもあり,耽美にして無機的でもある奇妙な美的空間。
そうしている間に,その世界を支配する者の王子のような若い男性がやってくるようになった。そして,王子から命ぜられるままにチェスのようなゲームの相手をするようになった。
美形、細身で何時も白い布1枚を巻いて身につけているだけの王子だった。
ある日,白い大理石の列柱のあるアラビア宮殿風の回廊でたたずんでいると,医師がやってきた。西洋人のような感じの男だ。
私は,連れ去れたときと同じように抵抗できなくなりそこに横たわってしまった。医師は,私の頭のあたりに手をかざして診断する。
医師:腫瘍がある。除去しなければならない。
私:腫瘍?
医師:そうだ。君はここに来る少し前に**法律事務所から依頼を受けて仕事をしたことがあるね?
たしかにそのようなことがあった。**事務所の幹部弁護士2名と面接し,意見交換をした上で仕事をし,完成して書類を提供したはずだ。
医師:その二人と会っていたとき,彼らは,君のことを「何てプライドが高く,傲慢な奴だ」と思っていたことに気づかなかったかね?
私:あの弁護士達はこの世界のスパイだったのですか?
医師は,頷いた。
たしかにそうかもしれない。私は自尊心が強すぎるのかもしれない。私の欠点の1つと言えるだろう。
しかし,客観的にみて,彼らの脳のレベルが低すぎて私の言うことを全く理解できなかったので,仕事の関係もあり,議論はもちろん説明しても無駄だと判断し,私が大幅に妥協して彼らの理解のレベルで仕事をすることにし,そういうものとして引き受けたのに過ぎない。そのことが「プライドが高い」ということになるのだろうか?
そんなことを思ったとたんに,医師の表情がゆがみ,埃のようになって砕け散ってしまった。それと同時に,連れ去られる前の世界を透視できるようになった。
あの弁護士達がほぼ同時に砕け散り消え去っていく姿がみえた。
その後意識を消失した。
医師がいなくなっても腫瘍除去の手術を受けていたのかもしれない。
気づくと,王子の大きなキャデラックの中にいて,向かい合ってチェスのようなゲームをしていた。簡単に勝ってしまった。
王子:この世界では僕が一番強かったのに・・・
私が黙っていると,王子はシートの横にあった英字新聞を手にとって頭にかぶった。王子の身体が埃のようになって消え去り,新聞紙だけが残った。
その新聞紙をみつめていると,その新聞紙を通して王宮の中が見えてしまった。
王は一人ではなかった。
数人の王が比較的小さな部屋の中に並んで座っている。椅子はなく,マットのようなものの上に座っており,背を壁面にもたれている。それぞれ王妃なのか愛姫なのか分からないが肉感的な女性と並んで座っている。どうやらこれらの王の合議制によってこの世界が運営されているらしい。
その王達の中で筆頭と思われる非常に肥満した王が立ち上がり,部屋を出た。議会のようなものがあり,そこで何かを説明しなければならなくなってしまったらしい。
ビザンチンのドーム型教会建築のような大きな建物の中で人々に対しバルコニーから何かを説明しようとする。
しかし,どこからともなく,「君の支配は終わった」との声が聞こえると,王の身体も滅び去り白い衣服と帽子だけが残った。
世界はカオスに陥るかと思った。しかし,そうでもなかった。
何となくのんびりした日々が続く。
そうしている間に,私は,自分が風のようになっていることに気づいた。私もまた,肉体というものがなくなってしまったのだろう。
回廊に植えてある2メートルくらいの高さの杉のような樹の枝の間にもぐりこみぐるぐる回りながら,風になった身体をその細かな葉でブラッシングするような不思議な感覚を楽しんでいると,この世界に連れてきた女性が歩いているのを見つけた。彼女に声をかけようとすると,世界がどんどん小さくなった。
いや。私が上空に舞い上がり,大空を飛ぶ鳥のように世界を眺めているのだということに気づいた。
美しい。
もう人々の欲得や情緒などを感ずることはできない。あまりにも小さすぎる。
たちこめた霧に朝焼けが乱反射する田園風景がどんどん小さくなり,いつのまにか銀河全体そして宇宙全体を眺めることができるくらい自分が高く・・・そうではない,自分が大きくなり宇宙全体が自分の中に取り込まれてしまっているのを感じた。
つまり,私自身が宇宙の外延であり,私自身から噴出するものが宇宙であるという空間的な無限の入れ子状態になっているのが空間そのものの本質だということを悟った。
そこでは,無も有もない。論じる意味がないのだ。
悟ったと思ったら,眠りから覚めた。
妙な夢だ。
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