Michel Dion, Financial Crimes and Existential Philosophy
Amazonに注文していた下記の書籍が届いたので,早速読んでみた。
Financial Crimes and Existential Philosophy
Michel Dion
Springer (2013/11/5)
ISBN 978-94-007-7325-7
2014年発行と印刷されているのだけれど,既に刊行されており,現に手元にある。Amazonサイトの記載によれば2013年11月5日に発行されたらしい。
内容的には,なかなか興味深いものだった。
当たり前と言えば当たり前のことなのだが,科学技術とりわけ情報技術の高度な進歩は,人々の精神構造にも重大な影響を与えており,従来の普通の人間観とは異なる人間性のようなものを想定する必要のある時代に突入している。
にもかかわらず,犯罪学や刑法学の世界そして警察の実務では伝統的な(理想的な)合理的人間のようなものを前提にすべてを想定している。
この書籍では,そのことがどれだけ深刻な悪影響を与えているかについて多くの示唆を与えている。
実は,ネット犯罪者だけではない。
仮想現実と真の世界とを混同し,わけのわからないエモーションで行動してしまう人々が世界中で巨大な規模で増殖している。とりわけ,戦争等により文化の断絶があり,富と教養の蓄積が低い国々ではそうだ。観念だけが先行してしまい現実との見分けができなくなってしまっている。SNSくらいしか楽しみがなく,それに依存してしまっている者では,そのような傾向が更に顕著になる。現実を直視せず,自分にとって都合の良い仮想現実の世界に逃避してしまっているからだ。
これは,世界の安定にとって極めて憂慮すべきことだと思う。
仮想ではない現実の戦禍が迫っているかもしれない。しかし,それは,実質を伴わない空想から生じているものであり,しかも精神の本質的部分の変容を伴うものであるので,従来のような考え方では回避困難な要素を含むものだ。
各国の為政者や外交官等がそのことを正確に理解しているかどうか・・・かなり心もとない。
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