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2013年8月11日 (日曜日)

不正アクセス禁止法のジレンマ的な謎-法の実効性をゼロにする最大の要素

不正アクセス禁止法2条1項は,次のように定義している。

 この法律において「アクセス管理者」とは、電気通信回線に接続している電子計算機(以下「特定電子計算機」という。)の利用(当該電気通信回線を通じて行うものに限る。以下「特定利用」という。)につき当該特定電子計算機の動作を管理する者をいう。

「管理する者」である以上,管理可能でなければならない。原始的に管理不能なものについては管理することができないので,そのような意味で管理不能な電子計算機については,アクセス管理者が成立し得ない。

ところで,電子計算機に製造当初から特殊なバックドアがあり,当該電子計算機輸出国の政府機関(軍や諜報機関等)が自由に当該電子計算機にアクセスし,その制御を支配することができるようになっていた場合,その電子計算機は,実は原始的に管理不能な電子計算機であり,ただ主観的に自分が「アクセス管理者」だと認識している者がそのことを知らないだけということになる。これは,間接正犯の道具となっている者と同じ状態にあることになるので,そのような主観的に自分が「アクセス管理者」だと認識している者の認識は完全に無視しなければならない。

さて,以上のような意味で原始的に管理不能でない電子計算機はどれだけあるのだろうか?

仮にほとんど全ての電子計算機が原始的に管理不能であるとすれば,不正アクセス禁止法が予定しているアクセス管理者がほとんどの場合に成立しないことになるので,結局,同法が適用される場面が非常に限られてしまうという解釈にならざるを得ない。

しかしながら,ごく普通の法律家には理解の範囲を超えていることだし,ごく普通の情報セキュリティ専門家にとっては全くもって承服しかねる結論だろうから,本当は全く空虚であっても,マリオネットの世界の仮想法世界で不正アクセス禁止法を適用するという劇を演ずるしかないということになるのだろう。

ホイジンガは正しい。

ここでもまた,私見である「免罪符説」の応用を試みることができそうだ。

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