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2013年3月 5日 (火曜日)

簡易裁判所少額訴訟制度の弊害

いわゆる司法制度改革なるものの実質的内容の大部分は,当初の最高裁の反対にも関わらず拙速に決定され押し切られたといった経緯もあって,欠陥だらけというしかない。基本的には大失敗だと思っている。リセットして旧制度に戻すべきだ。

失敗作の1つとして簡易裁判所の少額訴訟制度がある。

簡易迅速に事件を解決するという趣旨で新設された制度なのだが弊害がある。

迅速に勝訴判決を出したという実績稼ぎのためかどうか知らないが,極めてひどい審理不尽が目立つ。

司法試験に合格しておらず司法修習もしていない簡裁判事の場合,民事要件事実の理解が根本から間違っているのに自己の間違った見解を当事者に押し付け当事者の権利(訴訟上の人権)を侵害している例がある。

特に被告が勝訴すべき事案(=原告が敗訴すべき事案)において,被告が主張する適法な抗弁事由を理由なきものと言いくるめて撤回させた上で,原告勝訴の判決を言い渡している例もある。あまりにも不当だ。日弁連は実情を精密に調査した上で,日弁連としての対応策を真剣に検討すべきだと思う。少額訴訟なので(特に本来勝訴すべき被告の場合には本当はそもそも1円も出す必要がないはずであることから,弁護士にお金を払って相談することもまずないだろうと思われるので),不当審理や不当判決について弁護士が相談を受け,その実情を認識する機会が極めて乏しい。弁護士会は,特に意識して調査しなければ真の実情を知ることができない。

そのような事案において,通常の被告は,訴額が少額であるために弁護士に訴訟代理人を依頼することを諦め,泣く泣く不当な判決に従って,本来支払う義務のない金員を支払っているのではないかと思う。

仮に弁護士に訴訟代理人を依頼して異議を申し立てたとしても,異議審は当初担当の簡裁判事が引き続き担当することになるので,その簡裁判事は,弁護士であろうが誰であろうが怖いものなしに滅茶苦茶な法的見解を押し付け続けることができる。なぜなら少額訴訟では控訴できないからだ。ここらへんが民事調停と根本的に異なるところで,誤った簡裁判事は不正義を当事者に押し付けて平気でいることができる。もちろん特別上告だけはできるが基本的には通るはずがないので,第1審だけで終わりという確実な保障があることになる。だから,無能な簡裁判事ほどやりたい放題という結果になってしまうことになる。

もlしかすると,簡裁判事の中には「原告を迅速に勝たせるための制度だ」と誤解している者があるかもしれない。しかし,裁判所は正義を実現するためにある国家組織なので,被告に正義がある場合には請求棄却の判決をしなければならない。

当たり前のことなのだが,裁判官は常に公平でなければならない。

少額訴訟制度は,極めて有能で経験豊かな判事(=法曹有資格者)が担当する場合には合理的に機能し得るが,そうでなければ悪魔の制度となる危険性が高く,現実にそのような弊害が生じてしまっている。

仮に少額訴訟制度を残すとしても,最高裁は,法曹資格のない簡裁判事や判事として民事裁判を担当した豊富な経験のない簡裁判事が少額訴訟を担当することを禁止するように最高裁としての司法行政権の適切な行使を行うべきだと考える。

また,法テラスや弁護士の相談会などで相談を受ける者としては,少額訴訟とは控訴により別の裁判官が再審理する機会を奪われる法制度だということ(=少額訴訟における裁判が不当な場合には国家によって不正義を押し付けられることとなること=相談者が被告の場合には法的義務が全くないのに強制執行により財産権を侵害されてしまう可能性がある恐るべき法制度だということ)をきちんと説明し,理解してもらうべきだろうと思う。

医師の場合においても,即効性のある薬剤を患者に投与する場合において当該薬剤に副作用等があるときは,その副作用があること等を適切に説明すべき法律上の義務がある。法制度の運用をサポートする職種も同じで,法制度には良い面と悪い面の両方が必ずあるのだから,悪い面についてもちゃんと勉強しきちんと説明しなければ,当然のことながら,説明義務違反となるし,事案によっては損害賠償責任を負うべきこともあるだろうと考える。

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(民事訴訟法一部改正の提案)

民事訴訟法373条1項ただし書を全部削除する一部改正を迅速に断行すべきである。

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(訴訟運営上の提案)

民事訴訟法373条1項ただし書に該当する場合であっても,当事者の一方から強く要請があるときは,民事訴訟法373条3項4号に基づき,通常訴訟として審理するのを原則とすべきである。

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