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2013年2月16日 (土曜日)

オーストラリア:BRCA1癌遺伝子について,特許の有効性を認める判決

下記の記事が出ている。

 Australian court says “isolated” genes can be patented
 ars technica: February 16, 2013
 http://arstechnica.com/tech-policy/2013/02/australian-court-oks-gene-patents/

自然界で普通に発生可能な遺伝子組成について特許を認めることについてはかなり問題がある。そのようなタイプの遺伝子(アミノ酸配列)については,特許があっても特許権を行使できないようにする(またはライセンスの供与を法的に強制する)国際的な法的枠組みを構築することが必要だろう。

なぜなら,そのようなタイプの遺伝子の中には特許権者とは全く無関係のところで人間の関与とは無関係に無数に自然に発生し得るものがあるからだ。それは,対象となる遺伝子によっては人間の身体内で自然に発生することもあり得るのだが,たまたま病気になったら特許侵害をしたことになる(無許諾で特許を実施したことになる)というのだろうか?

明らかにおかしい。

そのような遺伝子を発見することは名誉あることだ。しかし,誰に発見されなくてもちゃんと存在し機能している。発見の努力は賞賛されるべきだが,発見されても発見されなくても,当該遺伝子の機能としての価値に全く変わりはない。

他方で,自然界では絶対に発生し得ないアミノ酸配列(人工DNA)については,普通の工業製品と変わらないので,特許を付与しても特に問題はない。

そこらへんの相違をちゃんと考えなければならないのだが,現実にはそうなっていない。かつての大航海時代と同じで,本当は誰か(先住民等)のものかもしれないのに,発見すれば大陸を支配することができるという思想に基づき,現在の知的財産権の世界は構築されている。歴史が極めて浅い国家では,それ以外に国家的資産形成の可能性がないのでそうせざるを得ないかもしれないので,よく考えてみると,後進国の悲哀または後進国の開き直り現象としてものごとをとらえることが可能かもしれない。けれども,かつての古代ローマがそうであったように,イタリア半島という辺境の小さな国が世界帝国になってしまうことはある。アレクサンドロスのマケドニアにしても,ギリシア全体の中でみると,アテネなどと比較すると,もともとは辺境の非文明的な小国であったはずだ。それにもかかわらず支配者となった。つまり,「どのような法制が世界を支配するか」ということを考えるとき,法制それ自体の論理的価値や普遍性はあまり関係がなく,特定の法制を物理的に強制することのできる極めて強大な軍事力を有しているか否かということだけが大事だという発想のほうが正しいということになりそうだ。つまり,観念的な意味での「正義」は存在せず,「勝てば正義」が常に正しいということになると思われる。

あまりにも無残な結論なのだが,法哲学としてではなく,事実としてはそう認めざるを得ない。

結局,弱い国は悲しい・・・

強国が強いる法制の枠組みの中で工夫しながら(場合によっては朝貢的なことをしてでも)生き延びるしかない。

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