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2013年1月27日 (日曜日)

金子敏哉「著作権の共有に関する一試論-交渉の先送りとその後の対応策」

金子敏哉先生から論文の抜き刷りを頂戴した。

 金子敏哉
 「著作権の共有に関する一試論-交渉の先送りとその後の対応策」
 日本知的財産学会誌9巻2号16頁
 2012年

著作物の共有に関しては,そもそも「共有」のとらえかたに関する民法上の解釈論において根本的な相違を含む諸説があることから,どのような考え方に立脚するかによって著作物(著作権)の共有に関する議論のあり方も異なってくる。

この論文は非常にオーソドックスな考え方に立脚した上で,共有物分割にまつわる紛争解決のための考察を行ったもので,参考になる。

なお,この論文とは無関係の一般論だが,現実には,そもそも共有なのかどうかが問題となる事例がある。客観的には共有者であるべき当事者が,それぞれ単独で権利者だと信じ込んでいる場合が特にそうだ。約定により(形式的には)単独保有になるようにみえる場合でも,当該約定が公序良俗に反して無効な場合や強行法違反の場合などには結果的に共有となってしまうことがあるわけで,ソーシャルメディアを含め,ネット上ではそのような事例が実は多数ある。本人がそのことに気づいていないだけだ。

また,ジェネレータによるプログラムやドキュメントの自動生成等の場合には,基本的には,常にこのようなタイプの法的問題が伏在しているということができる。このような場合にもやはり当事者としては自分の単独保有だと信じ込んでいるために,現実には紛争が顕在化しないというだけのことに過ぎない。

というわけで,潜在的な紛争は山ほどあることになるので,今後,著作権の共有または準共有的な事象について,法解釈論の面からだけではなく,事実としての実態調査という観点からも大いに研究が深められるべきだろうと考えている。

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