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2013年1月 5日 (土曜日)

LTEのトラフィック消費は異常に大きい-利用者の利用パケット数上限規制が必至-Verizonによる日本,韓国及び米国での実験結果

下記の記事が出ている。

 How are LTE networks affecting what mobile phone users do?
 Washington Post: January 4, 2013
 http://www.washingtonpost.com/business/technology/study-lte-users-use-less-wifi-eat-double-the-data-and-dont-buy-the-smorgasbord/2013/01/04/80322466-55e3-11e2-89de-76c1c54b1418_story.html

なお,私見によれば,総量規制をしなければ,LTEとモバイルを効果的に使った破滅的な威力をもつDDoS攻撃やモバイルデバイスに対する各種攻撃等が誰でも簡単にできてしまうと考えられる。とても危険だ。

むしろ,国は,重要インフラ防御及び国防のため,あまりに大きな伝送量を有する通信システムを原則禁止とするほうがベターだ。

以上は,誰でも簡単に予見可能なことだし理解しているはずのことなので(+セキュリティソフトによって全ての攻撃を阻止することが不可能なことは常識に属することなので),現実に重大事故が起きた場合には,全てのLTEサービス提供者が未必の故意による不法行為として,全損害について連帯して損害賠償責任を負うと解する。

やはり,私の予想どおり,今年はテザリングが鬼門となる。テザリングが基本要素となったサイバー攻撃が既に存在するが,広く一般化することになるだろう。

・・・というわけで,賢い企業経営者は,自分の企業組織の従業員に対しては,LTEを禁止するのが賢明だろうと思う。ただし,新しいデバイスやサービスに無思慮でとびつく馬鹿な役人や学者や経営者が決して少なくないので,結局は,破局的な事故は起きる。

当然起きるべき事故や攻撃等が起きるのは必然なのだが,私は,当然のこととして予想しているので,私が予想していたという事実を記録するためにこの記事を書く。

将来の被害者(及びその訴訟代理人となる可能性のある弁護士)及び消費者庁その他の関係官庁は,タイムスタンプ認証付でこの記事を記録・保存しておくとよいだろう。これだけきつく警告してあるので,将来の訴訟において,予見可能性の証明の助けになることは間違いない。

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(余談)

どうも世間には予見能力の劣っている人が少なくないようだ。

なんでキャリアによる通常の制限が効果的に機能するという前提でものごとを考えるのだろうか?

まるで「コンピュータは絶対にハックされることがない」という前提でものごとを考えているのと同じだ。

「どうやればLTEを攻撃用の武器にすることができるか」について詳細に書くと,いろいろと問題があるので書かない。

しかし,LTEは,それ自体として,明らかに深刻な事態を招き得る「用法上の凶器」であることは誰も否定できないと考える。

現実問題として,非常に近い将来の事故としては,つい数ヶ月前にも数回にわたってあったように,携帯会社の回線処理能力がパンクして通信不良となり,監督官庁から叱られるといったことが頻発することになるだろう。これは,単なる放漫経営の一種なので,もちろん経営者を解任または解雇または左遷すべきだと思う。これまで,そのような問題を起こした会社の経営者がほとんど責任をとっていないのは非常に問題だと思っている。この業界における企業の経営能力がないのだから,この領域からは去るべきだ。

しかし,私が問題にしているのは,そういうことではない。

「キャリアによる通常の制限」など何の意味もない事態を想定しなければならない。

通常の想定だけで足りるのであれば,福島第一原発の事故など絶対に発生しなかったはずだ。農林水産省の情報漏えい問題にしても同じだ。NICTは,24時間監視しているから大丈夫と豪語していたではないか。しかし,現実には何の役にも立たなかった。無駄なのだ。

誤解を招かないために付言しておくと,私は特に優れた人間ではない。

しかし,世の中には様々な人間がいて,使えるものなら何でも(正規の制限など一切無視して)徹底的に使ってしまうことのできる者も多数存在するということを知っている。それは,これまでの職業上の特殊な経験によって得られたものを多く含むので,普通の人とは少し違うかもしれないが,一般論として,自分よりもはるかに優れた能力を有する者が多数存在するということくらいは誰でも想像することができるはずだ。

はっきり言うが,LTEが何も問題を起こさないと考えている者は,馬鹿だ。その者がサービス提供者である場合,もちろん全面的に損害賠償責任を負うことになる。法律家として考えてみると,あまりにも当たり前すぎることなのだけれども,通信業界にはちゃんとした法律家が少ないので,このブログで警告している。

比ゆ的に言えば,V12型8000ccのエンジンを搭載した自動車でも,日本の公道(一般道)では時速60キロ以下(速度制限がある場合にはその指定された速度以下の速度)で走らなければならないのだ。

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(余談2)

LTEに関する商業宣伝広告では,現時点でも誇大広告に属するものが非常に多い。

今後,大域制限を含め,何らかの制限が携帯会社やキャリア等によって加えられ,または制限が強化される場合,LTEを使った通信の利点とされている部分が大幅に減殺されることが当然に予想される。技術的にどの程度になるかについては,この分野の技術者であれば即座に予想可能な範囲内だ。

すると,誇大広告の害は相対的に更に拡大することになる。

消費者保護の観点からすればかなり問題なことであり,監督官庁はしっかりと勉強した上で,誇大広告をバシバシ取り締まってもらわないと困る。

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[追記:2013年1月17日]

関連記事を追加する。

 Verizon not the only carrier eyeing LTE Broadcast
 Fierce Broadband Wireless: January 14, 2013
 http://www.fiercebroadbandwireless.com/story/verizon-not-only-carrier-eyeing-lte-broadcast/2013-01-14

 Spectrum: The Shortage Is a Crisis, but Not Serious
 Tech.pinions: January 16, 2013
 http://techpinions.com/spectrum-the-shortage-is-a-crisis-but-not-serious/13693

[このブログ内の関連記事]

 スマートフォンやタブレット型コンピュータがDDoS攻撃用のゾンビマシンとして使われる危険性が増大
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/ddos-7647.html

 サイバー犯罪の研究(一)-DoS攻撃(DDoS攻撃)に関する比較法的研究
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/dosddos-17d9.html

 RFIDとNFC(Near Field Communications)の問題点
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/rfidnfcnear-fie.html

 米国:Verizonがモバイル利用者の行動履歴データ(位置情報,Web訪問履歴等)の販売を開始?
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/verizonweb-fea6.html

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