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2013年1月31日 (木曜日)

米国:スタンフォード大学の研究者が,連邦刑法1030条の見直しをすべきだと提言

下記の記事が出ている。

 Almost jailed? Stanford wants researchers to recall the story
 SC Magazine: January 30, 2013
 http://www.scmagazine.com/almost-jailed-stanford-wants-researchers-to-recall-the-story/article/278167/

要するに,現行法のままだとほぼ全ての者が長期間の拘禁刑に服するという結果にならざるを得ないことから,もしかすると情報セキュリティのための重要な要員ともなり得る優秀な若者を単なる犯罪者として終わりにしてしまうという見解のようだ。

現実には,米国では訴訟取引もあるので,それほど単純な世界ではない。けれども,一般論としては確かに指摘されているような面はあるのではないかと思う。

米国連邦刑法1030条については,以前も翻訳したことがあるが,新しい論文を書く都合上,新たに翻訳し直している。その過程で様々な書籍を読み,かなり面倒な問題が多数あるということは理解しているつもりだ。

日本の刑法の関連条項の解釈・運用を米国法と対比して考えてみると,検察官における起訴猶予制度がかなり柔軟に運用可能なものとして存在しているので(障害となるのは検察審査会の強制起訴制度のみ。),検察官が起訴猶予制度を正しく運用すれば問題となるような弊害を除去可能だろうと思われる。

また,裁判官が懲役刑ではなく罰金刑を選択することで弊害の大部分を避けることもできるだろう。

しかし,やはり見直しの必要はあるのではないかと思いつつ,論文の執筆を進めている。考えがうまくまとまらないときは,しばらく投げておいて,頭を冷やした後にきちんと整理できたら執筆再開ということになるかもしれない。

[追記:2013年3月8日]

関連記事を追加する。

 US Attorney General: Swartz case a “good use of prosecutorial discretion”
 ars technica: March 7, 2013
 http://arstechnica.com/tech-policy/2013/03/attorney-general-swartz-case-a-good-use-of-prosecutorial-discretion/

[このブログ内の関連記事]

 米国:Aaron Swartz氏が死亡
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/aaron-swartz-a4.html

 米国:連邦刑法(Computer Fraud and Abuse Act (18 U.S.C. 1030))の法解釈が揺れている
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/computer-fraud-.html

 米国:サイバー犯罪に対する処罰強化を模索
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-e707.html

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