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2012年12月 2日 (日曜日)

オリンパスのスキャンダルを扱ったWoodford氏の著書が刊行された

下記の記事が出ている。

 The C.E.O. Who Shocked Japan Inc.
 New York Times: December 1, 2012
 http://www.nytimes.com/2012/12/02/business/exposure-the-story-of-a-british-whistle-blower-in-japan.html

ベストセラーになるだろう。

同じ問題は,世界の非常に多くの企業にある。

世界の監査法人は,実際には監査できない。会社の粉飾に協力するしかない立場にある。そうしなければ仕事を失ってしまうからだ。

会社法に定める内部統制や外部監査の仕組みは,社会学的または経済学的に観察してみると,その有効性について全く根拠がなく無意味な制度だと思っている。実効性を担保する素地が存在しないのだ。何しろ,監査法人で現実に仕事をしているのは,欲望の生き物である「人間」なのだから・・・

いずれまた世界の巨大監査法人の中のいくつかが消滅し再編が起きる。そして,この本と同じような本が書かれる。現にそのような重大な事態が進行中であることは,このブログの賢い読者であれば既に気づいていることだろう。

監査が信頼できないとなると,資産評価も不可能になる。つまり,株式や債券に対する投資が成立しなくなる。かくして,証券取引の世界も崩壊へと向かうことになる。

そのあとに来る世界では,「監査法人では駄目だ」という諦念に違いない。

このことは何も会計監査に限ったことではない。他の全ての外部監査や外部認証についても全く同じことを言うことができる。

正義を実現可能な社会的仕組みは,実はほとんど存在しない。

単なる空想または根拠のない期待だけが世界を支配している。

監査法人による監査を義務化した上で,監査法人が会社の粉飾を見つけたら,当該監査法人が告発すべき義務を法定し,当該告発にかかる粉飾等が有罪が確定したら,当該法人を強制的に売却してその売上金全部を最優先で当該監査法人に(褒美として)提供するような法制度にすれば,つまり,監査法人を会社の協力者ではなく会社の敵にしてしまえば,監査の実効性を担保することができるだろうが,そのような制度が成立する可能性はゼロだ。

強いて言えば,監査法人について告発義務を定め,監査法人が告発すべき合理的根拠を有しながらも告発しなかった場合には,当該監査法人に対して解散命令を発するような仕組みくらいなら構築可能かもしれない。

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コメント

立山紘毅 先生

昨晩,学部の忘年会があり,久しぶりに沢山お酒を飲んだら酔っぱらってしまいました。やむを得ず外泊です。ホテルのPCでコメントを拝読してます。

経済人は,利益を得るために生きているので,善玉も悪玉も存在しないのだろうと思います。ただ,金もうけの手法についてはどんな方法でも許されているわけではないので,違法な手法を用いたことが発覚すればアウト!というルールになっているだけのことだと思います。アウト!にならないように生き延びることも経済人として求められる資質・能力の一部であることは明らかなので,オリンパスの旧経営陣にはその資質・能力がなかったのに間違って経営陣になってしまっていたということなのでしょうね。そういう会社は極めて多いです。客観的には資質・能力が欠けているのに主観的には十分な能力を有していると信じているので悲劇が発生します。でも,経済人になるべきでないのに経済人になり,能力がないのにあるものと錯覚したことからまずい結果を招いているわけですから,自業自得というべきだろうと思っています。

人は,すべからく自惚れてはいけませんね。

自分の資質・能力に適した仕事の場をみつけることのできた人は,それだけで幸福なのだろうと思います。欲張るとろくなことがないです。

投稿: 夏井高人 | 2012年12月 9日 (日曜日) 08時07分

夏井高人 先生

 こっちに来て、少し周りを眺める余裕ができてきた、と思ったら、あと3週間で帰国です。年末ぎりぎりになりますね。

 さて、オリンパスの内輪もめ、善玉・ウッドフォード、悪玉・旧経営陣という「構図」が経済誌を始として定着しているようですが、本当なんでしょうかね? 私には善玉氏もまた「一味」にすぎず、結局「獅子の分け前」の配分をめぐる泥まみれの紛争にしか見えなかったし、さて、漁夫の利を得るのは誰か、としか見ていなかったのですが、どうやら漁夫の利を得るのは、似たような構図で外人CEOを迎え入れて、今や阿鼻叫喚と化している某社だったようです。弱者連合にならなきゃいいんですが。

 そもそも私には経営陣の内紛なんぞ興味も何もありません。むしろ、その後公益通報者が不利益を被ったという事件の方に興味がありました(もちろん、公益通報制度を無条件に是認するつもりはありません。なぜなら「密告社会」に容易に堕落するシロモノだからです)。

 最近はちょっと他の方面のお医者さんで忙しくて、あんまりお世話になっていませんが、オリンパスと言えば胃カメラでだいぶお世話になったものです。また、こっちにもってきているカメラもオリンパスPENです(レンズはライカ25mm/1.4)。ズイコーといえば、昔から無理な設計をせず、割合寒色系で比較的硬調ながらニコンほどではなくナチュラルな写りをするところでお気に入りでした。

 それに本格一眼レフは頸椎に軽い病気を抱えて、もう持てませんしね。

 そんな胃カメラや、小粋なレンズを作る職人さんたちがどんな思いでこういう内紛を見ているのか、一度営業の人に尋ねたら、首を振りながら「勘弁してくださいな」と笑っていた姿が忘れられません。

 どっちもどっち、こういう現場の人に土下座して、とっとと資産と報酬とを擲って二度と社会の表舞台に出ないことですな。

投稿: 立山紘毅 | 2012年12月 9日 (日曜日) 02時58分

集団ストーカージャーナリストさん

ヒトも生物の一種である以上,生存競争があり,資源を奪い合って生きています。ですので,ヒトは単に生きているというだけで常に他者に対して抑圧的な存在となります。相互にそうなので,ヒトは相互に抑圧し合う存在だということができるでしょう。

また,ヒトは利害が一致すれば群れて行動することがあります。これは原始人だった時代にオオカミと同じようにチームで狩をした名残りかもしれません。この場合,チームから仲間はずれされた者は,その理由のいかんを問わず必ず疎外感を味わうことになります。

そういうわけで,「孤立している」という状態をどう評価するかについては,かなり難しい問題があるということを理解することができると思います。

とりわけ,何らかの目的で意図的に孤立している人をどう評価すべきかは非常に難しいことです。群れで行動するという方法しか知らない人々には全く理解できないことかもしれません。

・・・とまあ,考えればキリがないわけですが,現実問題としては,生きていかなければならないわけですから,集団の中で阻害されても逞しく生存し続けることができるように強い人間になるしかないということになるのでしょうね。

法律家である私としては,そうしたくてもできない人々を法的手段によってサポートするということくらいしかできませんが・・・

ジャーナリストを職業とする方は,社会学的あるいは経済学的な側面だけではなく心理学的あるいは医学的な側面も含め,更には歴史的あるいは文化的な位置づけもしっかりと把握した上で,人間とその社会の本質に迫ったレポートを公表していただければ,私としても勉強になります。

投稿: 夏井高人 | 2012年12月 3日 (月曜日) 10時28分

先生お忙しい中ご解答ありがとうございました。

日本中の集団ストーカー(英語圏ではギャングストーキング)被害者にヒントになりました。

弁護士さん達の集団ストーカーに対する対応は全く無視か、被害を無視して自分の生活や仕事を全うする事を進めます。

群馬県警の裏金告発者の大河原宗平さんの弁護士さんが途中で弁護を辞退した様に問題があるのでしょうね。

投稿: 集団ストーカージャーナリスト | 2012年12月 3日 (月曜日) 10時02分

集団ストーカージャーナリストさん

その事件については,日弁連等の関連機関が重要な声明を出しています。しかし,基本的に無視されています。

なお,私は,集団ストーカーという類型かどうかわかりません。少し違うのではないでしょうか?

日本で普通にある企業構造上の欠陥が非常に濃縮されたかたちで表現されたというだけのことではないかと思います。

基本的に,日本の企業は等しく(潜在的には)同じ問題を抱えていると考えています。そして,マスコミは,そのような問題を抱えているようなタイプの経営者を逆に賞賛してしまうことが圧倒的に多いです。人を見る目というものがないのでしょう。

さらに一般化すると,日本では,機能で考えることなく,個人的な嗜好だけで判断をする経営者や管理職等が普通にいます。日本の教育システムがそのような人間に育つようになっているので,構造的な問題なのだろうと思います。

なお,オリンパスの問題の労働事件については,私も法律雑誌に判例評釈的なものを書いておりますし,過日開催された国際会議で事件の概要と問題点について研究報告しました。

投稿: 夏井高人 | 2012年12月 3日 (月曜日) 07時01分

オリンパスは集団ストーカーで社員から裁判で負けていますね。

内部からの告発者を社会的に抹殺するシステムが世の中に構築されています。

投稿: 集団ストーカージャーナリスト | 2012年12月 2日 (日曜日) 16時40分

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