Instagramの騒動からは何か見えるか?
下記の記事が出ている。
Instagram outrage reveals a powerful but unaware Web community
Washington Post: December 22, 2012
http://www.washingtonpost.com/business/technology/instagram-outrage-reveals-a-powerful-but-unaware-web-community/2012/12/21/b387e828-4b7a-11e2-b709-667035ff9029_story.html
この記事に書かれていることに尽きるのではないかと思う。
一般化すれば,ソーシャルメディアにしてもパブリッククラウドにしても,結局のところ,その利用者はベンダの奴隷に過ぎないので,ベンダの言うなりになってしまうことになる。
奴隷になりたい人はそれぞれの自由なのでそうすれば良い。しかし,第三者まで巻き込まないで欲しい。
写真の問題との関連では,自分の肖像写真等と一緒に写りこんでいる第三者の肖像については(当該第三者が肖像権者である以上)その肖像権の処分権がないので,自動的なシェアによって第三者の肖像を吸い取られてしまうことを阻止しない限り,不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求の対象となり得る。
また,顔認証の場合には肖像それ自体がIDとなっているため,第三者の写真を提供してしまうと,事案により,不正アクセス禁止法に違反する行為となってしまうことがないとは言えない。
だから,実名も実物写真も本当の住所・電話番号・電子メールアドレス等も一切提供してはならないのだ。もちろん,アドレス帳を自動的にシェアするなど,もってのほかであり,違法行為そのものとなり得る。
[追記:2012年12月24日6:12]
このブログは法律論文ではなく,私の個人用メモを一般公開しているだけなのだが,誤解のあると思われるコメントやツイートがある場合には一応応答しておくことがある。
高木さんから「正確な用語に言い換えるとIDではなく識別符号だが」とのツイートがあった。趣旨と意図は推測できる。しかし,私の文章の誤読に基づいていると思われる。指摘されているのは「顔認証の場合には肖像それ自体がIDとなっているため,第三者の写真を提供してしまうと,事案により,不正アクセス禁止法に違反する行為となってしまうことがないとは言えない」という文の部分だ。
私は,日本の不正アクセス禁止法だけを研究対象としているわけではなく,世界中のサイバー刑法を研究対象とし,順次研究論文を公表中だという事実を知っている読者であれば,意図的に「ID」と記載したことを理解できるだろう。その「ID」としての顔の映像要素が,法解釈上,日本国の不正アクセス禁止法に規定する「識別符号」に該当し得る場合があるのは当然のことだ。だから,わざわざ「事案により」と書いてある。
論理関係としては,「識別符号」よりも広い範囲のものを指すものとして「ID」という語を用いることにより,日本国以外の国の法令において無権限アクセスのために用いられるものとして処罰対象になり得る場合を含めることができるようにしておいた上で,更に「事案」という要素で限定を加えて絞った範囲の「ID」について,日本国では不正アクセス禁止法違反行為となり得る場合があることを指摘しているということになる。
論文ではないのではしょって書いてあるが,司法試験に合格した者であれば普通に読解可能な範囲内にある。法律家ではない一般人であれば誤読があってもやむを得ないが,念のため追記しておく。
[追記:2012年12月27日]
関連記事を追加する。
Facebook privacy violations: blame the settings or the etiquette?
ars technica: December 27, 2012
http://arstechnica.com/business/2012/12/facebook-privacy-violations-blame-the-settings-or-the-etiquette/
[追記:2013年1月17日]
関連記事を追加する。
Instagram reminds users of privacy policy change
Washington Post: January 17, 2013
http://www.washingtonpost.com/business/technology/instagram-reminds-users-of-privacy-policy-change/2013/01/16/124a8712-5fee-11e2-9940-6fc488f3fecd_story.html
[このブログ内の関連記事]
Facebookの写真共有サービスInstagramで混乱が発生
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/facebookinstagr.html
コミュニケーションツール利用者の不法行為責任
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-b6cf.html
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