« クラウドベースのアプリケーションサービスによる攻撃があった場合の問題点を指摘する報告書 | トップページ | 古谷栄男, 松下正, 眞島宏明, 鶴本祥文『知って得する ソフトウェア特許・著作権 改訂六版』 »

2012年9月20日 (木曜日)

中山信弘『特許法 第2版』

中山信弘先生から下記の書籍を頂戴した。定評ある教科書の改訂版だ。

 特許法 第2版
 中山信弘
 弘文堂(2012/9/15)
 ISBN-13: 978-4335304552

「特許法もしっかり勉強しなさい」というありがたい思し召しと解釈し,しっかりと読むことにした。

新しい問題点について興味深い問題点の指摘があり,刺激になる。

もっと能力があればソフトウェア特許関係についても論文を書いてみたいところなのだが,残念ながら目下研究中のことで手一杯なのでなかなか思うようにならない。とは言っても,この書籍でも指摘されているとおり,現在のソフトウェア特許に関する法令,理論,実務は,クラウドベースでのアプリケーションサービスではうまく機能しない。とりわけ日本国の特許法では,役務の提供それ自体を自然科学の応用としてとらえることができるかどうかがかなり問題となりそうなだけではなく,役務の提供が(方法特許としては成立可能としても)ソフトウェア特許という形式に馴染むものなのかどうか相当疑問がある。もちろん,役務を提供するために作成・運用されるソフトウェアそれ自体について著作権だけでなく特許が成立することはあり得ることだし,クラウドシステムの物理層全体を「媒体」としてとらえることも可能だと思われるが,大事なことは,どのようなソフトウェアによって当該サービスが提供されるかではなく,「当該サービス(またはその提供)それ自体がユニークなものでありソフトウェアというカテゴリーに属する知的財産権として保護されるべきかどうか」という点にある。なぜなら,全く同一内容または全く同一の属性を有するアプリケーションサービス(役務)を全く異なるソフトウェア及びシステムによって提供することは可能なことだからだ。換言すると,ソフトウェアとサービスとが1対1の対応関係を有するものとして固定されることはあり得ない。同一の「機能」を実現するための異なる手段は無限にあり得るのだ。

なかなか面倒な問題ではあるけれど,クラウド関連の特許をかなり多数読んできたこともあって,学問的好奇心を掻き立てられる論点の一つではある。

ということなどに興味をもったのだが,せっかく頂戴した書籍なので,全部しっかりと読み,勉強しようと思う。

|

« クラウドベースのアプリケーションサービスによる攻撃があった場合の問題点を指摘する報告書 | トップページ | 古谷栄男, 松下正, 眞島宏明, 鶴本祥文『知って得する ソフトウェア特許・著作権 改訂六版』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« クラウドベースのアプリケーションサービスによる攻撃があった場合の問題点を指摘する報告書 | トップページ | 古谷栄男, 松下正, 眞島宏明, 鶴本祥文『知って得する ソフトウェア特許・著作権 改訂六版』 »