人間の言動に関する記録とプロファイリングの危険性-過去に交際した後にわかれた元恋人等との交際関係や当時の感情等も記録され,リーク・暴露される危険性があるとの研究結果
下記の記事が出ている。
Facebook-stalking your ex stops your broken heart from mending (and a third of us do it)
Daily Mail: 21 September, 2012
http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2206531/Facebook-stalking-ex-stops-broken-heart-mending-it.html
Does Facebook Slow Recovery After Relationship Ends?
Psych Central: September 20, 2012
http://psychcentral.com/news/2012/09/20/does-facebook-slow-recovery-after-relationship-ends/44863.html
それはそのとおりだろうと思う。
このようなタイプの侵害行為(←故意による場合と過失による場合とで法的な取扱に差はない。)は,私見ではプロッサーの第3類型のプライバシー侵害を構成し得ると考えるし,通説では明らかに名誉毀損を構成することになる。
一般に,名誉毀損は故意の場合にのみ成立するとの誤解が蔓延・流布されているようだが,実際の訴訟では,あくまでも民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求等として訴訟提起されることになり,その訴訟における法的主張の一つとして「名誉毀損によって不法行為が成立した」との主張がなされるだけなので,あくまでも不法行為訴訟の一種ということになる。そして,不法行為は,民法の条文によって明らかに故意の場合と過失の場合のいずれでも成立することとされている。したがって,過失によるプライバシー侵害(不法行為)は,当然に成立可能であり,これが通説・判例というものだ。故意の場合にのみ成立するとの考えは誰が考えても明らかな誤りなので,是正してほしい。
さて,SNSについてだが,システム管理者がミスやバグその他の過失により,利用者の恋愛行動や性的言動等を外部に漏示してしまった場合,やはり,上記の意味での不法行為が成立する(故意の場合にも,もちろん不法行為が成立する。)。
それゆえ,EUの個人データ保護の基本原理の一つである「忘れ去られる権利(right to be forgotten)」は,直接的には利用者のプライバシーや個人データの保護に寄与することになるが,実はプロバイダにとっても大きなメリットのある考えであるということを正しく理解すべきだろう。
一般に,公法によって一定期間後における記録の消去が義務付けられている場合,法令に基づく行為として当事者の同意(承諾)を得ることなく記録を消去することができる。逆に,そのような公法上の義務がない場合,厳格には,(個人データの適正管理義務との関係上)当該個人データの本人から同意(承諾)を得ないと消去できないという関係も成立してしまうことになる。
だから,プロバイダとしては,収集した個人データを「ビッグデータ」としていつまでも抱えているのではなく,取得の目的を達した場合または法令の定める一定期間が経過した場合には自動的に消去してしまったほうが,相当利益に適っているということになる。
そういう利害打算を正しく計算することのできる能力もまた,経営者に求められる必須の能力の一つということができるだろう。
なお,損害の範囲について附言しておくと,情報の漏示や拡散等によって当該利用者が直接的に精神的苦痛を受けた損害(通常損害)だけではなく,そのようなことが起きた結果として失恋からの立ち直りが遅くなるなどの結果受けた副次的な損害(特別損害)についても,事柄の性質上,当然に予見可能なものと言うことができるから,賠償されるべき損害の範囲内に含めて考えるべきだと思われる。
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