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2012年9月23日 (日曜日)

米国:カリフォルニア州で,3Dプリンタの小売りが始まったようだ

下記の記事が出ている。

 California's first 3D printer retail store to sell $600 model
 ars technica: September 22, 2012
 http://arstechnica.com/business/2012/09/californias-first-3d-printer-retail-store-to-sell-600-model/

3Dプリンタの威力については,これまでも何度も記事に書いた。

販売すれば大いにブレークすることだろう。もしかすると今年最大のヒット商品になるかもしれない。

そして普及する。

普及したあとには,良いことも悪いことも起きる。

良いこととしては,物質伝送に類似することを実行できるようになるだろう。もちろん物質が伝送されるわけではない。しかし,3Dプリンタによって再現可能なものであれば,送信側からデータだけ送信してやれば,受信側で3Dプリンタによって物体化することにより,物質伝送をしたのと同じ結果を発生させることができる。文字だけでは説明困難な事柄について,模型やサンプルを送付する必要がある場合,即時にデータ伝送だけでそれを実現してしまうことができ,運送業を介する必要がなくなる。この原理を応用すれば,家庭用品の電送販売も可能になるし,その他多種多様な新たな娯楽サービスビジネスを構築することが可能になるだろう。また,センサーによって微細なレベルで測定することが可能であれば,人間の身体の全部または一部の寸法を送信し,受信側で合成樹脂を用いた3Dプリンタによって本物と0.1ミリのずれもないレプリカ人間(の全部または一部)を生成することも可能になるから,そのような技術を応用した遠隔医療というようなものを考えることもできる。更には,医療機関からCTスキャン写真データ等を処理センターに送信して3D設計図的なデータに計算処理してもらい,その処理済みデータの返送を受けた上で3Dプリンタを用いて人工骨格等を製造し,骨折の治療等に使うことができるから,普通の病院や個人医院等では計算処理が不可能または困難な3D設計図データ生成処理サービスを受注して処理するサービスといったビジネスを考えることもできるだろうと思う。

他方で,悪いことも起きる。例えば,従来は,特定の製品を構成する特殊な部品の金属金型を入手しようとすると,物理的に忍び込み窃盗を実行しなければならなかったかもしれない。しかし,これからは,当該部品をセンサーでスキャンするだけで,自動的にその部品を製造するための金型を3Dプリンタが構築してくれるかもしれないのだ。

同様に,これまでは模倣が難しかった立体物である著作物について,自動的な複製がどんどんできてしまう時代になったと言える。従来は,電磁的なコンテンツにおいてその複製の容易性から問題にされてきたことが,現実世界における物体についても生じることになるというわけだ。

要するに,総じて知的財産権の盗用が容易になる。

しかも,電磁的なコンテンツと異なり,DRMなどあり得ないので,著作権管理も物理的に成立し得ない。

そういう時代になったということを前提に,法制度を変えなければならないかもしれないし,少なくとも思考方法を再検討すべき時期に来ているのではないかと思う。

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