Yahoo Japanのインタレストマッチ広告
本日付産経新聞朝刊(12版5面)に「ヤフーメール解析広告-利便性と個人情報制度が追いつかず」との記事があった。
新聞記者は法律家ではないので法制度全般を知らないのは仕方のないことだが,それにしても粗雑な記事だと思った。「法制度が追いついていない」のではなく,「法制度を知らない」というだけのことだろうと思う。
新聞記者が理解できなくても知らなくても,違法行為は違法行為だ。
さて,その解析広告なるものは,下記のところにあるもののことを指すのだろうと思う。
インタレストマッチ広告と設定について
Yahoo
http://info.mail.yahoo.co.jp/im_optout/
Webメールなどで自動的にウイルス検出をする目的での自動解析をすることは,情報セキュリティの確保という目的から是認される場合があり,基本的には正当業務行為として違法性が阻却されると解するのが一般的な見解だ。総務省もそのような見解を採用している。
ここで留意しなければならないことは,正当化事由が存在しなければ,デフォルトでは「違法行為」だということを正しく理解することだ。
情報セキュリティの目的は,いわば公益的な目的であり,利用者個人に対しても直接的な利便を与えるものだから,違法性阻却事由として理解され得る基本的要件を具備していると言える。
しかし,商業宣伝目的は,Webメールを提供するベンダ側にのみ利益をもたらすもので,しかも営利目的なので,決して正当化事由にならない。
つまり,デフォルトに戻るので,機械で自動的に読み取る場合であっても,明らかに「アウト!」ということになる。
法制度は存在するのであり,それを知らない者は,知らないというだけで「悪」だ。
ちなみに,自動解析に基づく商業宣伝広告機能のあるWebメールなどを基本的なメールとして採用している大学があるが,その自動商業宣伝広告機能を完全にシャットアウトできるような仕様になっていない限り,それを採用している大学もまた共同不法行為者として,全ての教職員と学生に対し,損害賠償責任を負うと解する。
なお,個人情報保護法は,個人情報を管理する事業者に適用される行政法規なのであり,プライバシー保護法ではない。プライバシー保護法の基本法令は,民法709条なのだが,そんな簡単なことを理解していない三流法学者がいることは事実だ。そして,その教科書等で嘘ばっかり書いているものだから,社会全体に対して誤解を与えてしまうことになる。ジャーナリストや新聞記者は,もともと司法試験に合格しているわけでもなく,法律の専門家でもないので,そのような三流法学者の書いたものを鵜呑みにして,間違った記事を書いてしまうことがあり,そのことがますますもって社会に混乱を与えてしまうことになる。
そのような三流法学者の社会的責任はかなり重大であり,さっさと引退してほしいと強く願っている。
私は,プライバシー保護に関しては,古典的なプロッサーの類型に基づく不法行為理論によってかなりの部分をカバーできていると考えている。
そして,通信行政に関しては,従来からの解釈で十分対応可能なレベルにある。ただ,それが気に入らない「金儲け主義者」だけが「制度が追いつかない」と感じているだけのことだ。そう感じること自体がそもそも間違っている。
利用者を食い物にするビジネスは禁止するのが正しい。
「Googleがやっていることなのに何で悪いんだ?」という意見もある。
しかし,違法行為は違法行為だ。いつか処罰されることになる。
あくまでも一般論だが,「他の会社がやっているんだからいいだろ?」というような言い方は,「他の会社も粉飾したり脱税したりしてるんだから俺の会社でも粉飾したり脱税してもいいだろ?」というような理屈を是認することになるので,絶対に許されない。
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