心臓病治療のための細胞移殖技術
下記の記事が出ている。
Scientists reveal how to mend a broken heart (with a stem cell)
Daily Mail: 3 August, 2012
http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2183243/How-mend-broken-heart--stem-cell.html
この記事に書いてある医療技術が最終的に成功するかどうかはわからないが,仮に将来のある時点で成功したとすれば,そのときには,自己の細胞要素以外の細胞要素の移殖も可能となっているだろう。そうすると,同一の物体としてのヒトの体内に異なるタイプの遺伝子要素が共存し,かつ増殖を続けることになる。この場合,DNA鑑定は何をターゲットにすべきことになるのだろうか?
理論的には,DNA鑑定による同一性識別が意味を失うということがあり得る。
他方で,ヒトの細胞要素以外の細胞要素(人工的に製造された化学物質である場合を含む。)を移入し増殖させることに成功した場合,ミュータントの一種を形成することになる。それは,少なくともヒト(ホモサピエンス)ではなく,何らかの意味での交雑の一種であることになる。
生物学と法学との間には巨大な断層のようなものがあり,現状では相互に会話不能となっている。とりわけ,裁判官の多くは全く理解することができない。
そのような現状のままで,事実だけが変化していく。普通の人間にとっては,思考や心がとても追いつけない。
おそらく,法学全体の根本的な見直しが迫られているのだろうと思う。
私見としては,「意思理論」は放棄せざるを得ないのだろうと思っている。ヒトであっても,木や石と同じ「物体」の一種としてとらえるところから全部構築し直さないと,理論としての合理性を喪失することになるだろう。とは言っても,これまた大半の普通の人間にはとても耐えられることではないだろうから,嘘でも幻想でも何でも良いから,現状の理論を維持するという行き方もあり得る。ただし,その場合,「法学は何も問題を解決することができない」という結果を甘受しなければならないことになるだろう。
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