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2012年8月 8日 (水曜日)

EFF:連邦議会上院に提案されている国防機密漏洩防止法案が情報の自由と表現の自由に対する重大な侵害になるとの見解

下記の記事が出ている。

 Senate Anti-Leaks Bill Threatens the Rights of the Press and the Public
 EFF: August 6, 2012
 https://www.eff.org/deeplinks/2012/08/senates-anti-leaks-bill-threatens-rights-press-and-public

国防上重要性のある情報をどのように限定するかが問題だろうと考える。

もし非常にゆるく解釈するとすれば,国が保有する全ての種類の情報が国防と全く無縁なことではないので,国に関する情報は(国務大臣,国会議員や他の官庁等を含め)ごくごく限られた少数の担当者だけが知ることができるという状況になってしまう可能性がある。しかも,罰則付きということになると,たとえリークが国益に適う行為であり,かつ,国民のために最も良い行動だったとしても,情報をリークした記者等は一律無条件で刑務所行きということになってしまうことだろう。もっとも,重要な情報については大統領(日本で言えば,内閣総理大臣)を含めほぼ全ての国務大臣にも知らせない機密情報となる可能性が高いので,誰も何が問題がわからないうちに何となくよくわからない出来事が積み重ねられるということになってしまう可能性が高い。最悪の場合,諜報機関や国防のトップでさえ,本当のことは何も知らされず,いつのまにか誰か1人~2人くらいの悪人(陰に隠れた事実上の独裁者)が国を支配してしまうことさえあり得る(米国の場合,有名な諜報機関トップが事実上の独裁者だったのではないかとの意見があり,そのようなことが書かれた書籍が多数出版されている。このようなことは別に珍しいことでも何でもない。ステファン・ツヴァイクの『ジョセフ・フーシェ』を読めば,そのことを即座に理解することができる。)。

このような問題を避けながら国家機密を守るための方法としては,(1)「機密情報」の定義を厳格かつ明確に定めること,(2)定期的に「機密扱い」の適否を事後審査し,取扱が不適正である場合には担当者を例外なく可能な限り重い厳罰に処するようにすること,(3)一定期間経過後には全ての機密情報を例外なく開示する手続を定めること,(4)開示前に機密情報を紛失または消去してしまった場合には,無過失の場合であっても,その担当者を例外なく可能な限り重い厳罰に処するようにすること,(5)いかなる機密情報であっても,国会の調査権に基づく要請があるときは国会においては(特別な事情がない限り)開示しなければならないものとすること,(6)そのような国会による管理を可能とするため,機密とした種類の文書のリストだけは常に開示すること(機密であることを機密とし,または,機密の基準を機密としてはならない。),以上のようなことを定める必要があると思われる。

要するに,恣意的な運用を避けるための安全措置を確保するということだ。

そして,文書の作成・管理の担当者について,自分が処罰されたくなければ,できるだけ「機密扱い」としなくて済むよう,工夫しながら文書作成をする努力をするようにさせるということが重要だ。

以上の方策は,「個々の公務員が処罰を含め直接に法的責任を負うことはない」という現行の無責任原則を根本から変えるものなので,国家法全体の見直しを伴う。

そして,報道機関等がリークした結果,刑事責任を問われるようなことになった場合に備え,名誉毀損罪における正当化事由と同じような違法性阻却要件を定めておくべきだろうと思う。もちろん,ここで言っていることは,単純な泥棒行為を許容するという趣旨ではない。

なお,法案や条約案等については,一切の例外なく,機密扱いとすべきではない。過去の世界戦争や深刻な国際紛争の多くは,秘密の二重条約等が締結されていたことがその大きな原因の一つとなっているからだ。短期的には損をしたようでも,長い目でみれば名誉となることがある。短期的には得をしたようでも,長い目でみれば信頼の喪失という重大な損失を招くことがある。

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