サイバー軍条約?
下記の記事が出ている。
The Case For A Cyber Arms Treaty
Infomation Week: August 24, 2012
http://www.informationweek.com/security/government/the-case-for-a-cyber-arms-treaty/240006078
世界史に興味のある人なら誰でもよく知っているとおり,過去の歴史の中でただの一度だって「軍縮条約」が遵守されたことはない。
遵守されるはずがないのだ。
どの国だって,他国に対して相対優位を維持したいと考える。どの国もそう考えるものだから,何らかの抜け道をつくって事実上の軍拡をする。
そこで,新たな軍縮条約が必要になる・・・という具合だ。
それでも物理兵器だけの時代であれば,まだ国際的な監視が不可能ではなかった(ただし,監視できたとしても,当該の国が国際条約等から離脱してしまうと,全く何の意味もないこともまた,過去の歴史が示すとおり。)。
サイバー兵器及びサイバー軍の場合,監視が事実上できない。特に,軍の実体が,現実には民間企業や民間人(民兵を含む。)である場合や,関連企業や組織等に外注されている場合(サイバー傭兵を含む。)などには,ほとんど監視できない。
それ以上に問題なのは,「戦時と平時が常に共存する状況」の下では,サイバー軍やサイバー兵器が「軍」や「兵器」でありながら通常は全く別の目的で使用されちゃんと機能しているということが頻繁に起きる。つまり,純然たる「サイバー軍」や「サイバー兵器」といったものが全くないとは言わないが,実際にはかなり汎用的なものが普通になるので,純然たる「サイバー軍」や「サイバー兵器」には見えないというのがむしろ当たり前になってしまうことが明らかだ。
サイバー軍の軍縮条約は,理念的には理解できるが,その実効性が疑わしいということにならざるを得ない。
[追記:2012年9月2日]
関連記事を追加する。
State-sponsored cyber espionage projects now prevalent, say experts
Guardian: 30 August, 2012
http://www.guardian.co.uk/technology/2012/aug/30/state-sponsored-cyber-espionage-prevalent
[このブログ内の関連記事]
サイバー戦(Cyberwar)を国際条約によって抑制することは可能か?
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/cyberwar-81fc.html
Duquは,サイバー戦を発生させ,インターネット全体を荒廃させてしまうかもしれない
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/duqu-4734.html
サイバー戦などの現代戦が現実味を帯びてきてしまったことから,Peter Thomas Senese氏の『The Den Of The Assassin』という書籍が注目を集めているらしい
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/peter-thomas-se.html
シリアの電子戦部隊
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-ffbc.html
中国:他国に対するサイバー戦(サイバー攻撃)に民兵を活用?
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-b2d2.html
米国と中国が意図的にサイバー戦をエスカレートさせているとの報道
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-3553.html
Parsing Cyberwar
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/parsing-cyberwa.html
Cyber War and International Law
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/cyber-war-and-i.html
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