IPA:「パーソナル情報保護とIT技術の調査」報告書
IPAのサイトで下記の報告書が公開されている。
パーソナル情報保護とIT技術の調査」報告書
IPA: 2012年8月23日
http://www.ipa.go.jp/security/fy23/reports/pdata/index.html
内容的な間違いや,著作権法上の問題のある箇所がかなり多数あった。評価できない。
なお,ビッグデータに関しては,現行のいかなる国の法制下においても違法であることは既に書いた。
ビッグデータの用途
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-88b8.html
このブログではまだ記事にしていないが,誰もが本当は違法行為だとわかっているからこそ,主要各国において様々なロビー活動が盛んになっており,当該業界としてはどうにか適法行為とするため,立法によって解決しようと試みている。
もちろん,そのような立法の動きに対しては,プライバシー保護団体が強く反対している。
米国では業界側の勝ちになってしまうかもしれない。最近の裁判例の動きがそのことを暗示している。
しかし,EUでは状況が異なる。理論的には,EUの個人データ保護指令そのものを改正しなければならなくなるだろう。もしそのようになったとすれば,ACTAと同様,必ず否決されることになるだろう。
さて,現実問題として,英国ではそのような新規立法の動きがかなり具体化している。そのため,そのことと関連した議論が既に過熱しており,新聞各社も連日のようにこの問題をとりあげている。また,ZDNet UKなどのWebサイトにも関連する論説が掲載されている。
ただし,私は,これらの点については,意図的にブログの記事にしてこなかった。
そのせいかどうか知らないが,この報告書では,これらの点についてはほとんど触れられていない。
他方,Anonymousなどの人々は,まだ問題の本質に気づいていないようなので現時点では何も行動を起こしていないが,いずれ「何が問題であるのか?」に気づき,何らかの行動を起こすことになるだろう。
にもかかわらず,この報告書は,そういう状況にあることを踏まえないで,安易に個人データの二次利用による経済効果を是認し,現状肯定してしまうような態度を示している。
きっと,「哲学」というものが何もないんだろうなぁ~~
経済学の素養も全然ないのだろうと思う。
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