米満 潔ほか「大学コンソーシアムでの同期型遠隔授業の環境構築」
教育システム情報学会誌 vol.29 no.3 が届いたので,早速読んでみた。
下記の論文があった。実験結果の報告を主たる内容としている。
米満 潔,古賀崇朗,永渓晃二,高崎光浩,穂屋下 茂
「大学コンソーシアムでの同期型遠隔授業の環境構築」
教育システム情報学会誌 vol.29 no.3 pp.165-169 (2012, Aug. 16)
同種の実験は他の大学等でもなされてきたし,私も経験がある。もしかすると,最も早い時期から実験に参加した一人かもしれない。最初の実験を企画した当時は,インターネットの利用が普及していなかったし回線速度も遅かったため,衛星通信を用いた遠隔授業実験だった。その後,テレビ会議システムやらインターネットやらを利用した実験に参加してきた。
実験は実験でよいと思う。改善点が見つかる。
課題は次の諸点に尽きると思う。
A 運用面
1:履修者の出席・受講等の確認方法(履修登録者以外の聴講の防止等を含む。)
2:試験やアンケート等を同時に実施する場合の本人確認
3:補助スタッフの育成・確保(予算を含む。)
B 内容面
1:遠隔授業に適した授業内容・項目の選択
2:複数の教員が参加する場合のマネジメント(リーダーシップの所在・確保を含む。)
これらのうち,B1が最も重要と思われる。
わざわざ遠隔授業でやらなくても済むものについて費用をかけることは無駄なことだからだ。もちろん,遠隔授業に適した内容(コンテンツ)もたくさんある。その取捨選択が重要であるように思う。
このような感想をもつのは,授業を実施する教員というよりは,むしろ受講する学生の側ではないかと思う。このことは,授業効果とも密接な関連を有する重要な検討課題であるように思う。
私自身は,コンテンツの側から攻めている(B1)。
そのための様々な実験を繰り返し,実験を繰り返す中で将来の共同担当者(候補者)を次第に選別しつつある(B2)。
何となくその場のノリのようなものだけでやってみても,良いコンテンツを構築することなどできない。それなりの時間と努力とコストを要する。
大学によっては,普通に実施されている講義を録画し,それをコンテンツとして遠隔授業用ビデオ教材にしているところがあり,現実には遠隔授業と言ってもそのような例が多い。米国の著名大学でもそうだ。しかし,これは少しおかしいのではないかと思っている。少なくとも,ビデオ教材の特性を活かした効果を十分にあげているとは到底言い難い。このような例は,単にビデオ記録を聴取する機会を確保しているというだけのことに過ぎないのではないだろうか?
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