電子出版物の「みてくれ」
下記の記事が出ている。
電子書籍の(なかなか)明けない夜明け
第10回 電子書籍の組版を妨げるもの/おもてなしの技術としての組版
Internet Watch: 2012年7月6日
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/yoake/20120706_545049.html
私の理解によれば,電子出版の世界では,「論理」や「ストーリー」などの意味内容が重視され,「みてくれ」などの外観的装飾は2の次になるのではないかと思われる。
意味内容重視であれば,基本的にテキストだけで十分だ。
テキストだけで十分であるとすれば,そもそも電子出版である必要はないわけだが,それによって収入を得ている者としては無権限複製を阻止し,課金を確実なものとしたいわけで,「無権限複製阻止と確実な課金のためにのみ電子出版システムが存在する」といっても過言ではない。
残る問題は,課金されたライセンス料の分配問題だけだ。
日本の場合,流通側があまりにも多くを取り過ぎている。分配比率としては,現行の印税率(著作者側が5パーセント程度)を前提とするのではなく,著作者が70パーセント,流通側が30パーセント程度とするのが妥当だろう。
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(余談)
電子出版の技術は,電子コンテンツであればどんなものにも応用可能だ。そのため,例えば,AmazonやAppleが電子出版サービス(電子コンテンツ発行・管理・課金サービス)を提供する場合,その電子コンテンツの中には「書籍」に相当するものだけではなく,「音楽」や「映画」などに相当するものも含まれ得ることになる。伝送される電子データは電子データに過ぎないので,電子データである限り,どんなものでも「電子出版」できるということになる。
その場合,AmazonやAppleなどは,無権限複製の阻止や課金などを電子的かつ自動的に実行することになるだろう。また,課金からの著作者への分配も決済クラウドサービスを通じて自動実行されることになる。
要するに,近未来において,著作権管理団体は消滅するかもしれない。そして,それまで著作権管理団体が得ていた収入は,AmazonやAppleなどのサービス提供料金の一部として自動的に相殺されるかたちでこれらの企業が取得することになるのだろう。
著作権管理団体が管轄可能なものはないわけではない。例えば,カセットテープにアナログ録音されて頒布されている演歌などの歌謡曲が管理可能な物品に該当しそうだ。しかし,経済規模が小さすぎる。
著作権侵害行為があった場合,もともと著作権者がそれぞれ弁護士を雇って訴訟や刑事告訴等の対応をしていたけだが,これについても,AmazonやAppleなどが一定程度の定型的な法的対応サービスを代行することになるかもしれない。いわば司法クラウドとでも呼ぶべきものだ。日本国の弁護士法との適合性があるかどうかは微妙だが,もし世界がそうなれば日本だけ独自路線でいくことができなくなることは確実だろう。そして,この面でも著作権管理団体が出る幕はなくなってしまうことになる。
著作権管理団体の未来は非常に暗い。
経済原理なので,誰も阻止することができない。
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