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2012年7月25日 (水曜日)

英国:Golden Eyeが,有料ポルノビデオの違法コピーをダウンロード利用するなどしていたO2ネットワーク利用者約2000名に対し,損害金の支払を求めるレターを送付

下記の記事が出ている。

 More than 2,000 O2 'porn pirates' to be sent letters
 BBC: 24 July 2012
 http://www.bbc.com/news/technology-18968223

記事中には実際に郵送されたレターのPDFイメージがリンクされているので,どのような体裁・内容のものであるのかを理解することができる。それを読めば,内容的には問題があるとは考えられない。

問題となっているのは,「Goledn Eyeがどのようにして宛名になっている者の住所等の個人データを入手したのか」についてだ。

英国のO2は,Golden Eyeから任意の情報開示を求められた際,ネットワーク利用者のアドレスなどの個人データについて任意の提出を拒んだ。そこで,Golen Eyeは,裁判所に開示の申立をし,その申立が認められた。そして,Golden Eyeは,裁判所の開示命令に基づきO2が開示した利用者情報に基づいて今回のレター送付がなされたようだ。

日本法で言えば,権利侵害が明らかである場合には,プロバイダ責任制限法に基づいて,電気通信事業者に対する発信者情報開示請求がなされ得れる。P2Pファイルシェアリングの場合には,(システムの技術的仕様によっても異なるが)当事者全員が単なる受信者ではなく発信者でもあり得る場合があるため,そのような場合には,日本法に基づく発信者情報開示請求として,コンテンツのダウンロード者の情報開示をなし得る余地が全くないわけではないと解される。この「発信者情報」の中に郵便番号や住所等の情報が含まれる場合には,英国と同じことが起き得る。

なお,英国で問題になったのはポルノビデオであり,日本国の法制下であれば「わいせつ物(わいせつ電磁的記録)」に該当する。英国では禁制品ではないので適法に著作物であるということができるが,日本では禁制品なので,禁制品製造者の経済的利益を保護するために通信当事者の情報開示を求めることができるかどうかについては全く問題なしとしない。仮に賠償請求等が認められるとして,禁制品から得られた利益は没収されるべきものなので,結局,禁制品製造者の手には1円もわたらないということにならないとおかしいのではないだろうか?そうであるとすれば,日本では,禁制品については,著作権法に基づく法的保護を考えてはいけないということになるのだろう。

[追記:2012年12月28日]

関連記事を追加する。

 Golden Eye porn producer seeks to widen piracy blitz
 BBC: 27 December, 2012
 http://www.bbc.co.uk/news/technology-20852157

 

[このブログ内の関連記事]

 アダルトコンテンツの著作権侵害
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-db41.html

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