ACTA Chapter II Section 5 の仮訳
自分の勉強のため,ACTA Chapter II Section 5 の仮訳(私訳)をつくってみました。
誤訳が含まれているかもしれません。訳文の前書きの部分に利用条件等が記載されています。
ACTA Chapter II Section 5
http://cyberlaw.la.coocan.jp/Documents/ACTA Section 5.pdf
[追記:2012年7月22日8:40]
条約文(英文)にある脚注部分の和訳を付加した改訂版に更新した。
[説明]
仮訳では,27条4項にある「a subscriber whose account was allegedly used for infringement」を「侵害行為に用いられたと主張されているアカウントの保有者」と訳してある。「subscriber」を厳格に解すると,アカウント情報の提供を求められたプロバイダと契約している「加入者(=プロバイダと利用契約を締結している者)」ということになるので,直訳としては,「侵害行為に用いられたと主張されているアカウントを保有する加入者」ということになる。しかし,実際の運用では,「主張」に基づいて情報提供の要求がなされる以上,「加入者」も仮定的なものでよいという解釈が十分成立可能であり,そのように解釈・運用されるだろうということが明らかなので,あえて「侵害行為に用いられたと主張されているアカウントの保有者」と訳することにした。
なお,このようなアカウント情報の提供では,「アカウント」の範囲が明確ではないため,個人を特定するための全ての情報が含まれる可能性がある。また,プロバイダは,権利者からいつ要求がなされても対応できるようにするため,常時全ての通信記録を全ての著作権者の著作権保護期間が完全に終了するまで(=ほぼ永久に)記録・保存しなければならないという論理必然的な結果が生ずることになる。これは,サイバー犯罪条約等に定める警察からの要求による記録保全や保存等においてさえ一定の合理的期間内だけの記録・保存義務が求められているのと比較すると,著しく異常な義務条項だと言わざるを得ない。
しかも,「ハックされないコンピュータシステムは存在しない」ので,当然のことながらプロバイダのサーバも誰かにハックされることがあるかもしれない(←外部からの攻撃である場合と,内部者の持ち出しの場合とを含む。)。したがって,プロバイダが記録・保存を貫徹すればするほど,全ての人々の全ての情報が外部に流出してしまうリスクが極限まで増幅されてしまう危険性があると言える。
[追記:2012年7月22日17:13]
訳語の統一等のため一部改訂した2訂版に更新した。
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