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2012年7月23日 (月曜日)

ACTA Chapter VIの仮訳

自分の勉強のため,ACTA Chapter IVIの仮訳(私訳)をつくってみました。

誤訳が含まれているかもしれません。訳文の前書きの部分に利用条件等が記載されています。

 ACTA Chapter VI
 http://cyberlaw.la.coocan.jp/Documents/ACTA Chapter VI.pdf

[説明]

最後の条文には,日本国政府がこの条約関連文書の寄託国となると規定されている。

これは,そもそもACTA条約案が日本から発案されたものであることに由来する。

ACTAは,小泉政権時代に設置された知財戦略本部の目玉事業の一つとして推進されてきた。竹中平蔵氏は,その中のキーパーソンと言える。ACTAの条約案が提案されるまでの経過の中では,中山信弘教授の反対(抵抗)等もあることはあったが,結局は,著作権管理団体の傀儡に等しい人々(事務局)及びそれに迎合する少数の国会議員らに押し切られるような形で大勢が形成され,今日に至っている。このような著作権管理団体の関係者の中にはもと文化庁の役人であった者も含まれている(日本において著作権管理団体の重鎮として日本を支配するだけでは飽き足らず,ACTA理事会の理事となって世界規模で支配欲を充足させようとの意図に基づくものではないかと,つい邪推してしまいたくなるくらいだ。)。一般に,このような外部団体の役員や一般職公務員等は,政治家でも裁判官でもないので,もし「間違い」や「失策」等があっても,辞職等によって責任をとるということが基本的にない(←通常は,懲戒処分を受けるような間抜けなことはしない。)。従って,そのような一見真面目な能吏等は,あたかも,かの有名なジョセフ・フーシェ氏の如く,隠れたところから国を事実上支配し続けることができる。そのような生き方は,最も優れた秀才であれば一度は考えてみるかもしれないような生き方の一つだと言える。現実にそうするかしないかの分かれ目は,各人の自己顕示欲の実現の仕方の相違にのみあると言える。それにしても,著作権管理団体関係者が書いた著作権法の注釈書等をありがたがって拝み続けるというタイプの著作権法学者の姿を眼にするたびに,あまりにも情けなく,涙の出るような思いがする。「お前には学者としてのプライドが微塵もないのか!」と,つい怒鳴りたくなることさえある。しかし,侮辱罪等で訴えられるのがせいぜいなので,いつも心の中でそう思うだけで,黙っていることにしている。しかし,心の中では,そのようなタイプの者に対し軽蔑の極みであることを否定する気はない。

他方,ACTAの他の条約文を見ると,日本国の法制に慣れている者にとっては特段奇異とは感じられないものが少なくない。しかし,それは,日本国の政府及び司法機関(裁判所など)が国民のプライバシーと個人の権利保護を軽視し続けてきた結果,日本の国民にとって個人の権利が保護されない状態がむしろ当たり前だと信じてしまうような社会状況を構築できてしまったことの結果に過ぎない。そして,そのような社会状況は,中国や北朝鮮などでは違和感がないかもしれないが,少なくとも先進国の中では極めて異質なものであることを理解する必要がある。

日本国は,個人情報保護,プライバシー保護及び消費者保護の点で,世界の中でも最劣等国の部類に属している。そのような惨めな状況が形成されたことについては,少なからぬ数の法学者や法律実務家も大いに寄与してきた。

そういうわけなものだから,政府関係者等の中には「どうしてACTAが世界中から拒否されるのか」不思議に思う者があるのかもしれない。けれども,そもそも,そのように不思議に思う感性それ自体が根本から間違っているということを理解すべきだろう。

ACTAへの道は,度重なる著作権法の改正によって準備され,プロバイダ責任制限法の制定や児童ポルノ禁止強化のためのDNSポイゾニング手法の導入是認によって強化されてきた。これらが全て統合されると,ACTAになる。

「ACTA」は,「芥(あくた)」として掃除されてしまっても仕方のないものだと考える。

日本の法学者は,従来,タコツボ的に個別分野だけを研究対象としてきた。しかし,そのようなやり方は単に合理性・有用性を有しないというだけではなく,社会にとって極めて危険な結果をもたらす可能性がある。自覚のある研究者は猛省すべきであるし,今後は,全学問分野について常にエキスパートたらんとして猛勉強を重ねるべきだと考える。それは,現実には実現可能なことではないかもしれないが,そのような「心のベクトル」のようなものをもつことが大事なのだ。

 

[このブログ内の関連記事]

 ACTA Chapter I の仮訳
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 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/acta-chapter--2.html

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 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/acta-chapter-ii.html

 ACTA Chapter II Section 5 の仮訳
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/acta-section-5-.html

 ACTA Chapter IVの仮訳
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/acta-chapter-iv.html

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