ACTA Chapter II Section 4 の仮訳
自分の勉強のため,ACTA Chapter II Section 4 の仮訳(私訳)をつくってみました。
誤訳が含まれているかもしれません。訳文の前書きの部分に利用条件等が記載されています。
ACTA Chapter II Section 4
http://cyberlaw.la.coocan.jp/Documents/ACTA Section 4.pdf
[説明]
日本の場合,例えば文化庁が主務官庁になったとした場合,文化庁は,法務省(検事総長)よりも強い権限を有することになると思われる。
また,主務官庁の行政処分としてなされる押収,没収及び破壊は,裁判所の判断(判決)に基づいて執行される押収や没収(没収手続の中で執行される物品の破壊の場合を含む。)とは異なり,厳密には刑事手続ではないので,憲法に定める適正手続の保障が全く及ばず,単に行政手続法上の異議等の手続だけが国民によって救いの手段となり得るものと推定される。
加えて,冤罪であった場合にも,行政手続は処罰(刑罰)ではないので,刑事訴訟法に基づく再審の規定の適用はない。
要するに,ACTAでは,商標権や著作権侵害行為を犯罪として処罰すべしとする点につていは刑事法制のことを規定しておきながら,その執行については,検察庁が日本国憲法及び刑事訴訟法に基づいて適正に遂行すべき刑事手続とは別に,主務官庁による純然たる行政行為として刑事処分類似の押収,没収及び破壊を認めているという点で,極めて欺瞞的なものであるということができる。
日本国が批准したとしても,日本国憲法が定める人権保障条項に露骨に違反するものであるので,日本国において法的拘束力のある条約という意味では全く無効な条約であるということができる。
なお,無効な条約,法令,最高裁判決なるものが理論的に存在し得ることについては,夏井高人「植物分類体系の変化が法制度に与える影響-大麻規制法令を中心とする考察-」法律論叢84巻4-5合併号91-112頁で詳論したとおりなので,それを参照されたい。
[追記:2012年7月22日17:13]
訳語の統一等のため一部改訂した改訂版に更新した。
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ACTA Chapter II Section 5 の仮訳
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/acta-section-5-.html
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