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2012年7月 5日 (木曜日)

EU:欧州議会がACTA合意を破棄

下記の記事が出ている。

 Euro Parliament kills ACTA treaty before court can look at it
 Register: 4 July, 2012
 http://www.theregister.co.uk/2012/07/04/acta_rip/

 Acta: Controversial anti-piracy agreement rejected by EU
 BBC: 4 July, 2012
 http://www.bbc.com/news/technology-18704192

日本では著作権法一部改正により,ダウンロード行為の厳罰化がなされようとしているし,更には音楽著作権管理団体等によるインターネット上のトラフィックの監視を合法化する動きが強まっている。

これらの動きは,日本国政府(実質は,その背後にいる某元官僚)がイニシアティブをとって世界規模で進められてきたACTA合意にある。ACTA合意の本質は,国家権力を超えて,著作権管理団体が世界中の全ての通信内容を事前チェックする世界を構築するというところにある。

反対運動が起き,いったん合意に加盟した国も破棄するところがどんどん出ているのは当然の帰結と言える。

情報セキュリティのために警察によってなされる厳格な要件の下でのトラフィック監視とは異なり,特定の利益だけを代弁する営利団体によるトラフィックの全面監視は,いずれ国家の敵となる。なぜなら,全トラフィックを監視するのである以上,その中には重要な国家機密や軍事機密に属するものも当然に含まれるのであり,その情報が(利益を得るために)第三国に売り渡されることは必至と言わざるを得ないからだ。利益を追求することを目的として生きる者は,利益の獲得と増大のためには何でもやる。当たり前のことだ。裏切りを裏切りと感ずる心を捨て去るのでなければ,利益の増大のために生きることなどできない。

それと同時に,より多くの情報をより迅速に入手できる立場にある者が政治的野心をもった場合,その野心を実現しやすい状況を構築しやすいということも言うまでもなかろう。掴む情報の中には大臣や有力企業化等のスキャンダル情報も当然含まれるから,そのような情報を悪用して失脚させたり脅迫したりすることは容易だ。

かくして,著作権保護団体が政治的にも実質的な支配者となり得る状況が形成されつつある。

いつも書くことだが,著作権は財産権の一部に過ぎない。その権利が侵害された場合,第一次的には民事の損害賠償によって解決すべきだ。著作権のみを他の財産権とまるで比較にならないくらい強く保護し,刑事罰を強化し,更には警察よりも強力な監視権限を認めることは,法秩序全体のバランスを破壊することにほかならない。

このような事態に至るまで「知らん振り」を決め込んできた著作権法学者や関連学会等は,原発の危険性について口をつぐんできた原子力関係や地質学関係の学者らと同様,極めて無責任であると同時に国民に対して背信的であったということができる。猛省を求める。音楽著作権管理団体からの研究補助金等の打ち切りを怖れる気持ちを優先するのか,それとも,学者としてのプライドを優先するのか,そのいずれかによって後世における評価が完全に異なるものとなるだろうということをちゃんと自覚すべきだ。お行儀のよい「おぼっちゃん学者」や「お嬢ちゃん学者」は廃棄してしまったほうが良い。

[追記:2012年7月12日]

関連記事を追加する。

 Thank you SOPA, thank you ACTA
 EDRI: 4 July, 2012
 http://www.edri.org/edrigram/number10.13/good-bye-acta

 欧州議会のACTA否決で深まる日本の“監視・検閲型”知財政策への疑念
 ガジェット通信: 2012年7月5日
 http://getnews.jp/archives/230433

 

[このブログ内の関連記事]

 EU:欧州最高裁が,サービスプロバイダには利用者が著作権侵害行為をしているかどうかを監視すべき義務はないとの判決
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-aa6b.html

 EU:ACTAの批准を拒否する国が続出
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/euacta-a050.html

 ACTAはなぜ批判されるのか?
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/acta-75e1.html

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