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2012年6月14日 (木曜日)

佐賀の図書館騒動

下記の記事が出ている。

 ツタヤ図書館「個人情報、外に出ない」 佐賀・武雄市長
 朝日新聞:2012年6月12日
 http://www.asahi.com/national/update/0612/SEB201206120004.html

Twitterなどでも騒がれているようだ。私は一切関与しない。

なぜなら,こういう問題が起きることは,夏井・新保『個人情報保護条例と自治体の責務』(ぎょうせい,2007)で既に詳しく論じたとおりであり,特に加えるべきことはないからだ。

委託者が実質的には何も管理・監督できないというメカニズムになっていることは,パブリッククラウドの場合と同じなので,要するに,管理・監督できない(=完全な支配下に置くことができない)組織に委託する行為は,それ自体として常に違法だと考えなければならない。しかし,現実には委託先のほうがほぼ常に強いので,管理・監督などできない。にもかかわらず,スレイブの側がマスターである委託先に対して「ちゃんと管理・監督できる」と言って威張っている。本気でそのように考えているのだとすれば,思考回路が完全に破壊されてしまっているのだろう。さもなくば,とんでもない嘘つきまたは詐欺師であることになる。

もし正直であろうとするならば,「業務委託(事務委託)」と表現してはならない。「奴隷的屈従」または「奴隷契約」と表現すべきだ。

私は,講義の中では「SM理論(サドマゾ理論)」として構造解析の結果を説明することがある。奴隷となることにエクスタシーを感じているというわけだ。また,最近では,エリート秀才ほどそのような状態に陥りやすいという構造解析も進め,講義の中で少しだけ「秀才の符号理論」として紹介している。

結局,要するに,法律問題を正しく考えることのできる人間がほとんどいない,または,「法治国家」であることを放棄し「放置国家」としたいというむちゃくちゃな勢力が日本を支配しているということなのだろう。

とりわけ,トップが「悪」である場合にはどうにもならない。この「悪」の場合の類型の一つとして,「無知」である場合や「無能」である場合も当然に含まれる。

そういうわけで,私は,深い「諦念」の海に埋没しながら暮らしている。

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コメント

丸山満彦さん

コメントありがとうございます。

「委託先を監督したい気持ちはわかりますが、現実にはできませんね」ということですが,現実に監督できなければ個人情報取扱事業者としての義務にあからさまに違反してしまうことになるということを当然の前提とするコメントだと理解しますので,おっしゃりたい趣旨は,要するに,「みんな違法行為者だ」ということだと理解しました。

ちなみに,違法行為を違法行為と認識しながら敢て実行する者のことを,世間では「悪人」とか「犯罪者」とか呼びます。これって常識ですね。

投稿: 夏井高人 | 2012年6月17日 (日曜日) 16時28分

夏井先生、ご無沙汰しております。

先日、パブリッククラウドと内部統制についての講演をしたのですが、
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委託先をコントロールすることなどできない。せいぜいできたとしても、評価するくらい。でも、それだってどこまでできるかわからない。
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という話をしました。
委託先を監督したい気持ちはわかりますが、現実にはできませんね。残念ながら。でも、これくらいのことは多くの人は気づいていると思います。

投稿: 丸山満彦 | 2012年6月16日 (土曜日) 23時36分

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