Viacom 対 YouTube訴訟の控訴審で,連邦第2巡回区控訴裁判所が,第1審の判決を覆し,YouTubeに著作権侵害があったとして,差し戻しの判決
下記の記事が出ている。
Appeals Court Revives Viacom Suit Against YouTube
New York Times: April 5, 2012
http://mediadecoder.blogs.nytimes.com/2012/04/05/appeals-court-revives-viacom-suit-against-youtube/
Viacom wins reversal in landmark YouTube case
REUTERS: April 5, 2012
http://www.reuters.com/article/2012/04/05/us-google-viacom-idUSBRE8340RY20120405
この判決は妥当だと考える。
他人の知的産物を勝手に二次利用してよいはずがない。
最も重要な争点は,DMCAにおける適用除外(セーフハーバー条項の適用)があるか否かだったが,その要件充足性に関する事実認定が最も重要な争点なのであり,「認識の有無」に関する判断が異なった結果,このような控訴審判決になったものと考える。
一般に,著作権の領域でも,法解釈そのものというよりは,事実認定の部分に真の争点が存在することが多く,立証責任を負う側が証拠による合理的な立証ができなければ敗訴となるのは当然の帰結と思われる。世間の論文等を読んでいると,本当は事実認定に関する事案なのに無理やり法解釈が争点となっていた事案であるかのように誤解・曲解しているものも散見されるが,そのような論文を読むたびに,そのような論文を書く者の知性の低さを冷笑したくなる気分に襲われることを否定しない。このことは,間違った判決でも同じだ。
さて,一般に,(パブリッククラウドの場合を含め)Web上のストレージ内に当該ストレージ利用者だけが使用する目的でコンテンツを記録・保存するような場合とは根本的に異なる状況がある(この点の理解を基本的に間違っているMYUTA事件東京地裁判決等が基本を全く知らないという無知に基づく完全に間違った判決であることは既に何度も書いた。)。
要するに,YouTubeのようなタイプのサービスでは,最初から最後まで不特定多数の者に自動的に公開することを目的としてサイトが構築・運営されている以上,権利者から書面による明確な許諾を得ているものなど適法に権利を有するコンテンツでない限り,他人のコンテンツを自動的に公衆送信してはならないのだ。
このことは,出版社等でも同じであり,著者の書面による明確な許諾なしに雑誌掲載論文等を勝手にデータベース化して公衆送信する行為は違法行為となる。
ちなみに,著作物使用の許諾に際し,「利益がなければ使用料等を支払わない」という合意(条項)は公序良俗に反するものとして無効であると考えている。それは,「利益がなければ仕入れ代金を支払わない」と言っているのと基本的に全く変わらないからだ。そんなことが通用するはずがない。当該ビジネスが成功しようと失敗しようとそんなこととは全く関係なしに,当該ビジネスのために必要な仕入は発生するしその代金支払義務が生ずる。
| 固定リンク
« 米国:ユタ州の医療関連サーバが欧州のハッカーによってハックされ,約2万4000人分の医療情報が流出した可能性 | トップページ | 非常に多数のMacがFlashbackというトロイの木馬に汚染されているとの指摘 »
コメント