米国:Apple e-bookについて価格協定があり独占禁止法違反になるとして司法省が提訴
下記の記事が出ている。
Justice Dept. sues Apple, publishers over e-book prices
Washington Post: April 11, 2012
http://www.washingtonpost.com/business/economy/justice-department-files-suit-against-apple-publishers-report-says/2012/04/11/gIQAzyXSAT_story.html
US says Apple, publishers conspired to fix prices
msnbc: April 11, 2012
http://marketday.msnbc.msn.com/_news/2012/04/11/11140844-us-says-apple-publishers-conspired-to-fix-prices
A Ten Dollar Ebook Is Fine. At Twelve Bucks It's A Vast Conspiracy
Forbes: April 11, 2012
http://www.forbes.com/sites/bruceupbin/2012/04/11/a-ten-dollar-e-book-is-fine-at-twelve-bucks-its-a-vast-conspiracy/
日本の場合,再販売価格制度があるが,法理論的には基本的に違法な制度であることについてあまり異論はない。ある種の政策論に基づき存置されているだけに過ぎない。強力な存置論者も存在するけれども,要するに,単に当該業界の利益の代弁者に過ぎないので,何らかの合理的な理論的根拠があるというわけではない。
本来,出版する権利は,著作者にある。出版社は,著作者の出版行為を代行するアウトソースサービスのようなものだ。
しかし,従来は,現実的な出版手段(印刷装置や流通網など)を個々の著作者が保有していなかったため,出版業が「本質的には著作者の出版行為のアウトソース業務であること」が認識されにくかったのに過ぎない。
ところが,電子出版となると状況は全く別だ。
著作者は,露骨に,アウトソースとして,出版サービスクラウドを利用することができるようになる。そして,現実に,アウトソースとなる。そこでは,出版業それ自体が何か偉いとか名誉があるとかそういうことは全くなくなる。例えば,法学書でいえば,「権威ある出版社から出版しなければ立派な論文ではない」といった類の迷信のようなものは消え去ってしまうことだろう。要するに,アウトソースなので,どこから出版しようと関係ないのだ。しかも,そのような意味での出版は,従来の意味での「出版社」でなければならない必然性が全くないので,ほぼ全ての種類のIT企業にとって可能だと言える。
出版業界だけではなく,著作権法学者を含め法学者もまた,このような環境の根本的な変化を正しく理解し,正しい法理論を述べるべきだと思う。
従来の法理論の中には,論理的な正しさというよりも,単に時代的な技術的制約に思考拘束されてしまった摩訶不思議な理論やレベルの低い意見等が多すぎたように思う。
そして,このような環境変化を正しく理解し,真の価値創出者である著作者を大事にして誠実・確実にアウトソース業務としての出版業務を遂行することのできる出版社だけが生き残ることになるだろう。
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