オーストラリア:Microsoftが,オーストラリア政府の「自国民の健康保険データをオーストラリア国内で記録管理する」との方針について,セキュリティのレベルが低いとして強く批判
下記の記事が出ている。
Microsoft attacks the Gillard Government's plan to store e-health records in Australia
Australian: November 25, 2011
http://www.theaustralian.com.au/news/nation/microsoft-attacks-the-gillard-governments-plan-to-store-e-health-records-in-australia/story-e6frg6nf-1226205148994
要するに,世界規模でのパブリッククラウドベンダは,世界各国政府よりも「偉い」ということを言いたいのだろうと思う。
現実には,Microsoftが直接に管理するサーバでも各国政府が管理するサーバでも,脆弱性の程度に差はない。所詮は,欠点多き「人間」が管理するコンピュータシステムの一種に過ぎない。世界規模での巨大なパブリッククラウド企業の人間だけが特に優れているという証拠は一切存在しない。
むしろ,世界規模での巨大なパブリッククラウドにデータが集中した場合,攻撃対象がごく少数に絞られてしまうことから,破壊や流出等の危険性が何倍にも増すことになるだろうと推定される。
現実に,MicrosoftのAzureはこれまで何度もトラブルを起こしている。AmazonでもGoogleでも,このことは基本的に変わらない。
以上のことは,誰にでも容易に理解できることだ。
自国民のデータは,政府が責任をもって自国内で管理するのでなければならない。それができないというのであれば,潔く政治の世界を去るべきだし,国政の担当をやめるべきだと考える。
にもかかわらず,世界規模での巨大なパブリッククラウドベンダが強気を維持できるのは,もちろんその背後に米国政府が控えているからだ。
米国政府が意図的にそうしているかどうかは別として,このまま各国の国民の重要なデータが世界規模の巨大なパブリッククラウド上でのみ処理されるような状況が続くとすれば,結果的に,米国政府が,ロシア,中国,イラン等を除く世界の主要国の国民全員の情報を常にリアルタイムにモニタできる環境が構築されてしまうことを意味する。
これは,国家主権に対する侵害行為そのものだと考えられる。
[このブログ内の関連記事]
グローバルなクラウドコンピューティングとローカルな国家主権をめぐる議論
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-38ba.html
クラウドコンピューティングにおけるデータ主権
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/post-892d.html
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