TUBEFIREが著作権法違反として違法であるとすれば,SaaS型のダウンロード支援は全て違法であるかもしれない
細かな説明を要しないだろうが,簡単に要点だけ書いておく。
1)クライアント側でWeb上のファイルをダウンロードする際に用いる簡単整理ツールはいくらでもある。
2)仮にダウンロードが違法複製に該当する場合には,ダウンロードした者が著作権侵害行為をしたことになり,相応の法的責任を負うべきである。
3)しかし,Web上のファイルのダウンロード行為が常に全て著作権侵害行為となるわけではないし,ツールの提供者が利益を得ているわけでもない。
4)したがって,ツールの提供者には,(積極的に著作権侵害行為を推進する趣旨でツールが設計・構築・提供されたことが証拠によって明確に証明できるような場合を除き)原則として,著作権侵害行為があるとは言えず,被害者(原告)は,個々の著作権侵害行為の存在を個別に主張・立証しなければならない。そうでなければ,そのツールによってダウンロードされたファイル全部について著作権侵害とならない場合でもツール提供者に対して損害賠償責任を負わせることになり,裁判所は,原告の不当利得獲得(←著作権侵害行為がないのに獲得した損害賠償金は法的根拠のないものであり,不当利得となる。)に協力している犯罪者(加害者)であることになる。これは,北朝鮮の裁判所でさえしない重大な人権侵害行為の一種であるし,また,そのような判決をする裁判官は「歩く非関税貿易障害」のようなものである。
5)以上のことは,そのようなツールが,クライアント側のマシン上で実行されるアプリケーションソフトウェアである場合だけではなく,SaasのアプリケーションやASPによるアプリケーションサービス等としてWeb上で提供されている場合でも全く同じである。
6)なお,処理中にWeb上のどこかでキャッシュが生成されることがあっても,それが処理のための一時的ファイルの生成であり処理終了後には消滅してしまうものであるとすれば,形式的には「複製」ではあるけれども,複製権侵害には該当しない。もし一時的なキャッシュ等の生成をもって複製権侵害であるとすれば,全てのコンピュータ利用者が日々刻々とてつもない分量の複製権侵害をしていることは確実であり,その「全てのコンピュータ利用者」に権利者団体が含まれることは当然のことであるが,そんな馬鹿な結論を承認する者はいないだろう。
7)以上のことが裁判所によって否定されるとすれば,ファイルの移動処理を伴うアプリケーションサービスを含むものである限り,ほぼ全てのSaaSやASPが違法な存在であることになる。つまり,日本では,SaaSやASPのビジネスを行うことができなくなる。MicrosoftやGoogleのクラウドサービスも禁止されなければならないことになるだろう。
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(余談)
マクロ的に現在生じている現象を観察してみると,要するに,日本の音楽著作権管理団体は,全てのパブリッククラウドサービスに対して戦を挑んでいることになるのだろうと思う。
日本では,著作権管理団体が勝つかもしれない。
かくして,日本は,国際的に孤立することになる。
私は,重要なデータの処理や一瞬でも継続性が損なわれてはならない重要な処理をするためにパブリッククラウドを用いることには大反対の立場をとっている。とりわけ,法令によってデータの厳格な管理が求められている場合にはそうであり,どうしてもクラウドを利用したいというのであれば,カスタムメイドのプライベートクラウドの利用をすべきであって,パブリッククラウドを利用すべきではないと考えている。
しかしながら,社会生活において大きな支障を及ぼすわけではない個々の消費的サービスについては,「それぞれの利用者の自己責任で,パブリッククラウド上のサービスの提供を受ければよい」と考えている。
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