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2011年10月20日 (木曜日)

情報ネットワーク法学会第11回研究大会

情報ネットワーク法学会の第11回研究大会が北大で開催されたので,札幌まで出かけてきた。

 情報ネットワーク法学会
 http://in-law.jp/index.html

財布にも秋風の吹く季節なので,ANAのマイレージを使ってチケットを購入し,懇親会等の兵站(飲食代)を確保した上で出発し,紅葉に染まりゆく山野を眼下にのんびりと楽しみながら札幌に到着した。(笑)

さて,学会関連のイベントの中では何と言っても懇親会が一番楽しかったのだが,それはさておき,研究発表はどれも興味深いものばかりだった。分科会に分かれての研究発表だったので全部を聴くことができない。一番興味をもった分科会に参加することにした。

もちろん私見とは異なる発表が多数あった。見解の相違が全くなければ研究者とは言えないので,それはそれで構わない。私個人としては,比較的若い世代の発表が多かったという事実を素直に喜びたいと思う。会場から厳しい質問等があるのはまじめな学会であればどこでも同じなので,若い世代の研究者は,会場から難しい質問を受けることをおそれず,自由闊達にどんどん発表をしてもらいたいと思う。「自分の知らないことやわからないことがいっぱいあるという事実を認識・自覚する機会を得る」ということも学会の良い点の一つではないかと思う。

さて,様々な発表の中で,壇俊光先生,森拓也先生及び今村昭悟先生の共同発表「発信者情報開示請求訴訟における対抗言論の法理」が最もおもしろかった。

内容は,「対抗言論の法理」を論ずるものではなく,要するに,プロバイダ責任制限法における「明白な権利侵害」に関する要件事実論なのだが,実務的には極めて重要な課題のひとつであるにもかかわらず,民法学者や民訴法学者の多くにはその重要性が認識されていない課題のひとつなのではないかと思われる。

発表は,私見とは異なるベースのものであったかもしれない。私見は,「明白な権利侵害」が主要事実であり,例えば通常の名誉毀損訴訟における抗弁事由等は抗弁として扱われるのではなく「事情」の一つとして扱われるという見解だ。これは,発信者情報開示請求の被告であるプロバイダ等が,本来的な意味で防御権を行使できる被告ではなく,法定の形式的な被告になっているからにほかならない。真の加害者は,発信者情報開示請求の手続の中で「当事者」として現われることがない。もし訴訟参加等として真の加害者が当該手続中に現われれば,それだけで発信者情報開示の目的を事実上達してしまうことになるだろう。

壇俊光先生らの研究発表は,基本的には,これまでの裁判例を丹念に調べ,要件事実論上の問題的を指摘するもので,とても勉強になった。

見解の相違はあるけれども,私は私のアプローチで研究を深めてみようと思った。

次に興味をもったのは,「社会保障・税番号(マイナンバー)制度の意義と課題」というパネルディスカッションだった。

これは面白かった。

ただ,パネルとして参加していた高木浩光氏があまり時間をもらえず欲求不満であることが明白だったので,研究会終了後の懇親会で,別の機会にゲスト講師をお願いすることにした。快諾していただけた。そのゲスト講師としての講演では,思う存分自説を開陳・展開していただけるものと期待している。

私見としては,このパネルのテーマとの関係での高木浩光氏の見解は100パーセント正しいと考える。同氏の見解は,政府の政策決定とは相反するものかもしれない。しかし,理論的には明らかに正しい。

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