西田昌吾:「訴権の濫用」をめぐる裁判例と問題点
下記の論文を読んだ。参考になる。
西田昌吾
「訴権の濫用」をめぐる裁判例と問題点
判例タイムズ1350号12頁~25頁
あくまでも一般論だが,訴訟マニアには功罪がある。
「負」の側面については,上記論文でくまなく論じられているので特に述べることはない。
「負」の側面の副作用(←負の負なので正?)については,知っている人は知っているが大概の人は全く知らないのでちょっとだけ触れておく。それは,判例法の形成に寄与しているということだ。例えば,裁判官の忌避等の条文があることは法学部の学生であれば誰でも知っていることだ。しかし,その条文の解釈をめぐる争い(訴訟案件)のかなり多くが,訴訟マニアが当事者となっている事案だということは知られていない。とにかく彼らはよく勉強している。条文によっては熟練の裁判官以上によく知っている。しかし,目的が目的なので,彼らの言い分が通ることはあまりない。とはいえ,そういった裁判例が積み重ねられることによって,ノーマルな状態であれば絶対に参照されることのないような条文をめぐる判断が示されることになり,判例集の中で先例のない条文がないような状態が形成されることになるのだ。
以上は,決して良いことだとは思っていないし,ノーマルなことだとも思っていない。
しかし,本当はそういうことだということを知って学ぶのとそうでないのとでは大きな違いがあるので,質問に来る学生にはときどき説明するようにしている。
ある先例(裁判例)を理解しようとする場合,その先例がどのような事案であるかというコンテクストのようなものを理解することなしには正しい理解を得ることはできない。
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