「スマート***」という用語が増えてきた。色んな意味で用いられることがあるが,「スマート(smart)」は「無線で操作できる」とか「無線で通信できる」ということを意味するのが普通だ。例えば,「スマートカード」とは非接触型のカードデバイスつまり電波チップを内蔵したカードのことを意味するし,「スマートグリッド」とは無線通信ネットワーク及び無線で管理されるメーター類等で管理される送電システム等のことを意味する。「スマートフォン」は,無線で通話できる電話という意味しかない。
つまり,電子機器類の属性を示す形容詞としては,「スマート」には,「格好良い」とかそういう意味はなく,単に「無線デバイスだ」という意味しかない。
日本では,「スマート」の英語上の意味を何も考えないで無意識に使っている人が決して少なくないが,気をつけないといけない。馬鹿にされる危険性がある。そのような馬鹿にされる危険性のある語の例として,「スマートクラウド」なる和製英語のようなものがある。「スマートクラウド」は,世界中どこでも通用しない(=「滑稽」の部類に属する。)。
さて,そうしたスマートデバイスを駆使した社会には,それ自体として大きな脆弱性がある。そのことについては何度も触れてきた。
今朝も,Web上の記事を読んでいたら,下記のようなものをみつけた。
Magnitude 4.0 - DOMINICAN REPUBLIC
2011 September 22 16:33:10 UTC
http://earthquake.usgs.gov/earthquakes/recenteqsww/Quakes/pr11265002.php
世界中誰でも同じことを考えている。
考えていないのは,それを売ろうとする企業だけかもしれない。
しかし,自然災害や大規模攻撃等によって破綻し,世界中の人々が恐怖に震えるような事態が発生するまでは,止まることがないだろう。
基本的には原発ビジネスと全く変わらない。
なお,電波は無限のリソースではない。逆にかなり希少なリソースだろうと思う。周波数帯の獲得のための企業間の争いは年中行事のようなものだ。いずれ常に混信だらけとなり,電波デバイスが使い物にならなくなる時代がやってくるだろうと思う。
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(余談)
現在,「スマート」は,これまで日本で用いられてきた「ユビキタス」とほぼ同じ意味で用いられているのだろうと思う。
しかしながら,「ユビキタス」はカトリックの宗教用語なので,「信教の自由を保障するため,宗教学の文脈で用いる場合以外は用いないほうが良い」と提言してきた。まして,「日本国の政府が用いることは禁止すべきだ」とも主張してきた。
日本における常識とは異なり,世界的には私見のほうが通説であり,IT関係で「ユビキタス」を用いる例は皆無に近い。
何しろ,日本と異なり,宗教上の争いがエスカレートすると流血の惨事になってしまうことは(世界では)日常茶飯事のことだからだ。そういうこともあって,世界的に「ユビキタス」という語を用いることが避けられてきた。例外的に,IT産業の世界で「ユビキタス」を用いる組織・団体・企業等は,日本の組織・団体・企業以外では,ほぼ例外なくキリスト教系の組織・団体・企業だ。
日本の広告産業やキャッチ産業は,英語の真の語感や政治的・社会的影響等を考えずに,安易にカタカナ英語のキャッチを製造してしまう悪弊がある。ある意味で「社会性の欠如」と表現しても良いだろう。そのことが日本の安全保障に与える悪影響にははかり知れないものがある。
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