スマートメーターで収集される個人データの保有者が誰になるのかを知らない経営者が52パーセントとの調査結果
下記の記事が出ている。
52% of Muni Utility Execs Unsure Who Owns Smart Meter Data
GreenTech Grid: September 6, 2011
http://www.greentechmedia.com/articles/read/stat-of-the-day-52-of-muni-utility-execs-unsure-who-owns-smart-meter-data/
「誰のものか?」と問われると,哲学的または神学的な議論になってしまうので,問いが正確ではなかったかもしれない。
「誰のものか?」を問わず,「自己の支配圏にあるものとして管理している個人データについて,どのような法的義務があるか?」という問いのほうが適切だったのではないかと思われる。
あくまでも一般論だが,日本国の個人情報保護法から考えると,個人情報データベースを現実に実装する物理データベース装置は,明らかに個人情報取扱事業者が所有または管理する物理装置だ。だから,「所有するのは誰か?」と問われれば,その物理装置は個人情報取扱事業者が所有する場合が多いだろうと思われる。しかし,誰が物理装置を所有するのかという問題とは無関係に,個人情報取扱事業者が管理(保有)する個人データについては,個人情報保護法に定める個人情報取扱事業者としての行政法上の義務が課される。この点については異論はないと思う。
問題は,具体的にどのような義務が課されているのかを事業者がちゃんと理解しているかどうかだ。
非常に多くの場合,間違って理解しているように思う。例えば,目的外利用や第三者移転の際には「事前の同意」が必要なのだが,「オプアウトなので,事前に同意を必要とするわけではなく,事後的に異議があれば削除すれば足りる」といった具合に間違って理解している事業者がないわけではない(←開示の求めや利用停止の求めなどの場合と混同しているのではないかと推測される。)。
米国の場合,金融・信用分野や医療分野などのような特殊な分野で特別法が定められている場合を除き,不法行為法の一部であるプライバシー権に関する判例法と州法が適用されることになる。これを法律家ではない経営者に対して理解しろというほうが無理なことかもしれない。しかし,それでもなお経営者は理解していなければならないのだ。
それゆえ,経営者は,企業内にちゃんとした法務セクションを設けるか,または,自ら真剣に勉強するしかないということになる。
不勉強によって法制度を知らなくても,「法律の不治」は許されない。つまり,本当は何も知らない場合であっても,法制度を知っているという前提で法が適用される。
クラウドコンピューティングに関して何百もの調査報告書や統計などを読んできた。もちろん,とても優れた報告書が多数あり,「とても私には書けないな」と実感したものもあった。逆に,「これはどうだろうか?」と疑問に思うものもあった。疑問に思うものでも,資料は資料なので,その中から「何を読み取ることができるか?」を考えることにしている。
さて,この記事の文脈に戻ると,「52パーセント」が何を意味するかについては,多義的な解釈が可能なように思う。
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