原子力安全委員会の原発安全性審査基準には何も根拠がなかった
下記の記事が出ている。
原発安全審査、根拠不明の基準 電源喪失で安全委
共同通信: 2011/08/03
http://www.47news.jp/CN/201108/CN2011080301001167.html
そうだろうと思っていたが,関係者がやっと事実を認めたということなのだろう。
この事実が判明した影響は極めて大きい。
これまでの原発関連訴訟において,(最高裁を含め)日本の裁判所は,「国が厳重な安全審査をしたから」原発は安全だとの判決をしてきた。
ところが,その判決理由の根拠は,実は全く空虚だったことになるからだ。
私見としては,このような場合,判決は無効であり,事件はまだ終局に至らないで係属中であるとの見解を支持する。したがって,(当時の)当事者は,弁論の再開のために期日指定を求めるというのが正しい。
ただし,通説は,おそらく,形式的には判決が確定している以上,民事再審によるべきだとの見解だろうと思う。ところが,裁判所は,民事再審をやりたがらない。
自分の非を全く認ないという点では,日本の最高裁もまた,世界のトップレベルにある。
しかし,よく考えてほしいのだが,「判例の変更」という制度が民事訴訟規則及び刑事訴訟規則に定められている以上,「変更されるべき判例」となる判決や決定等が必ず存在するはずであり,その判決等は,どんなに遅くとも「変更すべし」との判断が成立した時点では無効または違法なものとなっていたということでなければ,判例変更制度の存在を説明することができない。
つまり,無効または違法な判決は,理論上も制度上も存在する。
問題は,裁判官が,くだらない見得や世間体や出世意欲などを捨て,素直で正直な気持ちになれるかどうかだけだ。
更に重要なことは,ストレステスト以前の問題として,そもそも原発に対して現在与えられている「安全」との審査結果が基本的には何も根拠のないものであることが明らかになったということだ。このことは,「全ての原発を直ちに操業停止すべきである」とする意見・主張のための非常に有力な根拠となり得る。基準の根拠が不明である限り,基準そのものが全く意味をなさないし,そのような意味のない基準による審査結果はすべてナンセンスということにならざるを得ない。
ちなみに,これまでの原発関連訴訟において証人となって証言した安全委員の中には,偽証罪に該当する者が含まれているかもしれない。
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(余談)
私は,電力労連がどうして文句を言わないのか不思議でならない。
何も根拠のない,とても危険な施設で労働に従事しなければならないのに何とも思わないのだろうか?
あるいは,最初から,正規雇用の従業員は原発(現場)に一人も存在しないのかもしれない。
正規雇用でなければ「危険な状態にあっても無関心」というのでは,人倫に反する。
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