MP3tunesがEMIなどの音楽産業に対して勝訴-クラウドベンダは,仮想ストレージサービスの利用者に著作権侵害があるかどうかを調査する義務を負わない
下記の記事が出ている。
Music industry under pressure after landmark MP3tunes copyright ruling
Telegraph: 23 August 2011
http://www.telegraph.co.uk/finance/8718017/Music-industry-under-pressure-after-landmark-MP3tunes-copyright-ruling.html
US court clears the way for cloud music
Financial Times: August 23, 2011
http://blogs.ft.com/fttechhub/2011/08/us-court-clears-the-way-for-cloud-music/#axzz1VtAJpetN
Cloud music-locker ruling: MP3tunes claims '99% victory'
Register: 23 August 2011
http://www.theregister.co.uk/2011/08/23/mp3tunes_v_emi_music_locker_summary_judgments/
日本のMYUTA事件等と同じ構造の事件だが,この記事に出ている米国の裁判では,MYUTA事件東京地裁判決やロクラクⅡ事件最高裁判決とは正反対の結論となった。
私は,もちろん,日本の裁判官の判断は狂っていると思っているし,それらの裁判官にはさっさと依願退官してほしいとも書いてきた。
米国の判決に賛成する。
しかし,日本にはMYUTA事件判決とロクラクⅡ事件判決があるので,米国とは反対の世界となる。これらの判決が本当は支離滅裂な無効判決であることを裁判所自身が認めるまでは,日本では,iCloudのような音楽クラウドサービスは違法行為となる可能性が高い。AppleやAmazon等は,日本では適法にビジネスをすることができないかもしれない。仮に日本の音楽産業がiCloudやAmazon等の米国の巨大企業に対してだけは何も文句を言わないとすれば,その行為は,単純に日本企業に対する「差別」であることになるだろう。
著作権との関係では以上のとおりだ。
さて,これをクラウド一般について敷衍して考えてみると,面白い結論が導出される。
ストレージサービスを提供するベンダは,利用者がストレージ内に記録するデータの内容について調査する責任を負わなくてもよいことになる。その結果,ベンダは,他の利用者が違法行為をしているかどうかを調査しない以上,利用者に対し,他の利用者による利用が安全であることを保障しないということになる。
つまり,クラウドでは,システム全体としての安全性が保障されない。
安全性を保障するためには,利用者がストレージ内に記録するデータを細部にわたって常に検査することを要することになるが,そうなると,利用者がストレージ内に記録するデータについて機密性を放棄するということになるだろう。
要するに,どっちにしても,「パブリッククラウドの利用者は,パブリッククラウド上の仮想サーバに重要なデータを記録してはならない」という結論になる。
[このブログ内の関連記事]
日本ではiCloudは著作権法違反として違法行為になる?
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/icloud-e580.html
MYUTA事件判決が正しいとすれば,日本ではパブリッククラウドビジネスが危険であるかもしれない
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/myuta-bdb7.html
| 固定リンク
コメント