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2011年7月20日 (水曜日)

イカタコウイルス作成者に器物損壊罪で有罪判決

下記の記事が出ている。

 データ改変は「器物損壊」 イカタコウイルス作成者に実刑判決 東京地裁
 産経ニュース: 2011.7.20
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110720/trl11072011380002-n1.htm

器物損壊罪については,物理的な棄損がなければ犯罪が成立しないとする説と,物理的な損壊がなくても効用を損なえば犯罪が成立するとする説との間で対立があった。

東京地裁は,後者の説を採用したことになる。

なお,本質的には,電子データに対する損壊罪を法定すべきものであったと思われる。

電子データに関しては,今年6月の刑法等一部改正によっても保護強化の方向での法制整備が進んでいない(ただし,イカタコ事件のようなタイプの事案については,不正指令電磁的記録作成罪を適用し得ることととなった。)。

電子データの完全性の保護(電磁的記録損壊罪の新設)だけではなく,機密性の保護(保護された電磁的記録に対する無権限アクセス罪の新設)及び可用性の保護(電磁的記録利用妨害罪の新設)が検討されるべきだろう。

これらの罪については,近時改正されたドイツ刑法の各条項が参考になる。

 StGB
 http://www.gesetze-im-internet.de/stgb/

***********************************

(余談)

判決文を読んでいないので何とも言えないが,もしデータの自動改変(損壊)だけが犯罪事実として認定されているのであるとすれば,問題が発生し得る。

というのは,刑法259条は,「権利又は義務」と関係する私電磁的記録の損壊行為のみを処罰対象としていることから,逆に「権利又は義務」と関係しない私電磁的記録の損壊行為は無罪となるからだ。

本件における損害が実質的には「権利又は義務」と関係のない電磁的記録の損壊行為だけだったと仮定した場合,本来であれば無罪とされるべき行為を,別罪が成立するものとして処罰したという点で全く問題なしとすることができない。

ただし,本件における実質的な損害が「ハードディスクを使用不能の状態にされた」という点にあり,そのための手段として(無罪の行為である)「権利又は義務」と関係のない電磁的記録を損壊したというものであって,かつ,そのように犯罪事実が認定されているのであれば,効用棄損説を採用する限り,器物損壊罪が成立することは当然のことということになるだろう。

[追記:2011年7月29日]

被告人が控訴したようだ。

 「イカタコ」作成者側が控訴
 産経ニュース: 2011.7.28
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110728/trl11072819060007-n1.htm

[追記:2012年3月26日]

控訴審でも有罪となったようだ。

 イカタコウイルス作成者、2審も実刑判決
 産経ニュース: 2012.3.26
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120326/trl12032618210005-n1.htm

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