ストレステストがストレステストになっていない
下記の記事が出ている。
ストレステストにテロ攻撃は含まず 政府答弁書
産経ニュース: 2011.7.29
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110729/plc11072912060016-n1.htm
これではテストすべき項目の半分にしかなっていないことは既に書いた。
原発のシビアストレステストを1日でも早く実施するための方法
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-fa14.html
私は,意地悪でこういうことを書いているのではない。
原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年6月17日法律第147号)は,「異常に巨大な天災地変」と「社会的動乱」があり得ること,その場合には,誰も賠償し切れないほどの巨額の損害が発生し得ることを当然のこととして「想定」しているからだ(3条1項)。この場合,(私見では3条1項ただし書による免責は違憲だと考えるが,仮に合憲だとしても)単に損害賠償責任が免除されるというだけのことであり,,「異常に巨大な天災地変」と「社会的動乱」による損害の発生を防止すべき電力会社及び国の責任(作為義務)まで免除されているわけではない。これは,いわゆる「当然解釈」の一種だ。
そして,「社会的動乱」の中には,戦争だけではなくテロ攻撃も含まれる。
しかも,テロ攻撃は,単なる「想定」ではなく,現実に存在した。連合赤軍の事件やオウム真理教の事件をその例としてあげることができるだろう。このような事件は,今後も十分に発生し得る。
小グループでも大量破壊兵器の製造可能 オウム真理教事件で報告書 米シンクタンク
産経ニュース:2011.7.29
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110729/amr11072913370006-n1.htm
だから,国は,戦争やテロ攻撃に対する耐性をもテスト項目に入れなければならない。
そして,そのような攻撃を防御しきれない場合には,原発の存在をあきらめるしかないのだ。
もしそうでないとすれば,国と電力会社は,未必の故意による殺人を実行しつつあることになる。そのことは,まさに国と電力会社が国民に対するテロリストであることを意味する。
国と電力会社が「テロリストではない」というのであれば(←テロリストであってはならないのだが・・・),対テロ耐性についても厳格に審査をしなければならない。
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(余談)
公平のために書いておくと,日本だけが駄目というわけではない。
米国の原発も韓国の原発も,戦争やテロに対してほとんど無防備だと言ってよい。
韓国でそうなってしまっている理由は日本の場合と同じだろうと想像する。
米国の場合はちょっと異なっているかもしれない。それは,米国では,「米国内に対して攻撃を受けることはない」との前提があるのではないかと思われるからだ。
米国では,東西冷戦当時,東側陣営から大陸間弾道弾を用いた核攻撃があることを想定していたし,現在でも想定している。その核攻撃の標的の中にはもちろん原子力施設も含まれている。
にもかかわらず,米国が現実に攻撃を受けることがないとの確信があるように思えてならない。
これまた,「根拠のない自信」の一種であり,現実に,9.11によって国内でのテロが成立することが実証されてしまっている。
にもかかわらず,上記のような確信は揺らいでいない。
まことに不思議な国だとしか言いようがない。
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