班目氏-名誉毀損は成立しないのではないか?
下記の記事が出ている。
班目氏が政府発表に「名誉毀損だ」と反発 政府は「再臨界の危険」発言を訂正
産経ニュース: 2011.5.22
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110522/plc11052220430013-n1.htm
しかし,班目氏は,3月28日の記者会見において,汚染水への対応実施について,「安全委はそれだけの知識を持ち合わせていない」との発言をしている。つまり,「原子力発電の専門家としての専門的知見を持っていない」ということを自ら明確に認めていた。
その結果,3月28日の時点で,自らの専門家としての名誉に関する社会的評価を自分の手でゼロにしてしまっていたことになる。
セロになった社会的評価はそれ以上下がりようがない。つまり,法的には,毀損の対象となる名誉がない以上,名誉毀損は成立しないという結論になる。
この方は,ご自身の言動について確実に記憶しておくことが非常に困難な状態にあるようだ。お気の毒に。職を辞して休養されたほうが良いと思う。
ちなみに,現在の原子力安全委員会は,内閣から完全に独立した組織としての法的な位置づけをもっていない。内閣に反抗し続けるようであれば,更迭しかないだろう。内閣の対応のほうが悪い場合でもそうだ。本当は内閣の対応のほうが悪いという場合には,政治的に責任をとることになる。それでもなお,組織の規律は必要だから,もし私が内閣総理大臣であれば,相当以前の段階で既に更迭していたと思う。
そもそも,東芝製の原発がとんでもない事故を起こしたというのに,東芝出身の人間が原子力安全委員会の委員長の職にあって良いはずがないのだ。利害関係者は排除しなければならない。
東京大学:教員紹介:班目春樹教授
昭和45年3月 東京大学工学部機械工学科卒業
昭和47年3月 東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専門課程修士課程修了
昭和47年4月 東京芝浦電気(株)(現・東芝)入社 総合研究所勤務
昭和50年4月 東京大学工学部原子力工学科講師
昭和51年4月 東京大学工学部原子力工学科助教授
平成元年8月 東京大学工学部附属原子力工学研究施設助教授
平成2年11月 東京大学工学部附属原子力工学研究施設教授
平成17年4月 東京大学大学院工学系研究科原子力専攻教授
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/epage/faculty/t_meibo/84824218.html
ちなみに,班目氏は,3月22日の参議院予算委員会において,浜岡原発運転差し止め訴訟の静岡地裁における証人尋問と関連する質問に対し,非常用ディーゼル発電機や制御棒など重要機器が複数同時に機能喪失するような事態は「想定していない。そのような想定をしたのでは原発はつくれない。」と答弁している。
つまり,東芝が製造しているタイプの原子炉では安全なものなど決して製造不可能なことを当初から熟知しながら,原子力安全委員会の委員長に就任し,税金によって多額の報酬を受け続け,しかも,「安全委はそれだけの知識を持ち合わせていない」と明言していたということになる。
しかし,人々がそのことについて何も言わずに黙っていたとしても,天は必ず観ている。
東芝の営業戦略上の標語の一つであった「ユビキタス」の本来の意味は,「神は常に監視している」という意味であり,したがって,「死後必ず神の裁きを受ける」という意味だ。
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(余談)
原子力安全委員会の委員長は,国の原子力政策について重要な位置づけをもつ組織のトップだ。東電や東芝のような一般企業のトップとは異なる大きな権限を有し,非常に重い社会的責任を負っている。原子力安全委員会が判断を誤れば,原発事故が発生し,多数の人が死傷し,将来相当長い期間にわたって原爆病に苦しめられることになる。また,何兆円もの財産的価値が失われてしまうことにもなる。原発事故は絶対に発生させてはならない事故であり,そのような事故を発生させないためにこの委員会が設置されている。
ところで,原子力損害賠償法3条1項ただし書は,「ただし,その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは,この限りでない。」と規定している。つまり,法は,「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱」が発生可能な事態であると想定していることになる。想定しなくてもよいことを法が定めることは自己矛盾となり,法それ自体として向こうとなってしまうので,「法に定めていることは全て想定内の事柄だ」と理解しなければならない。
したがって,原子力安全委員会の委員長としては,法が想定している「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱」があり得るものとして思考し行動すべき法的義務がある。
法が想定しているのに,国の機関が想定しないでいることは許されない。
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原子力損害賠償責任法3条1項ただし書は,憲法違反で無効
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/1-0060.html
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