IPA:2010年度バイオメトリクス・セキュリティに関する研究会報告書
IPAのサイトで,下記の報告書が公開されている。
「2010年度バイオメトリクス・セキュリティに関する研究会報告書」の公開
IPA: 2011年4月27日
http://www.ipa.go.jp/security/fy22/reports/bio_sec/index.html
この報告書とは関係ないが,一般に,バイオメトリックスを用いた個体識別は万能ではない。
例えば,ヒトの識別の場合,一卵性双生児やクローン人間では,遺伝子配列が全く同一なので,遺伝子による識別はできないし,遺伝子によって完全にコントロールされている生体的特徴による識別もできない。
今後,汎用幹細胞による人工臓器がどんどん製造されるようになると,バイオメトリックスを用いた識別はほとんど無意味なものとなるだろうし,それまでに要する年月はそんなにかからないだろうと推測される。
他方で,指紋,虹彩,静脈,骨格等による識別を破るための技術的方法が既に開発され利用されていることは周知のとおりだ。
更に,データ対照用のデータベースをハックすれば,何でもできてしまう。とりわけ,内部に共犯者がいる場合には,「万事休す」だ。ここでは,普通の情報セキュリティが問題となるのであり,生体要素であるかどうかは基本的に関係がない。
加えて,法的には,「個人」が全く定義不可能なため,識別の対象がはっきりしないという大問題がある。このことは,会員用ニューズレターの中に収録したショートショートもどきの中で描いたとおりだ。
要するに,生体要素による識別は万能ではないし,管理を誤ると非常に危険な結果をもたらすということを忘れてはならない。
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