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2011年5月 8日 (日曜日)

EU:政府によるインターネット上の児童ポルノのフィルタリングが欧州人権条約違反であるとの議論

下記の記事が出ている。

 The curious case of Internet filtering in Ireland
 EDRI: 4 May, 2011
 http://www.edri.org/edrigram/number9.9/internet-filtering-ireland

この記事に出ている訴訟の結果がどうなるかはわからない。

仮に欧州人権条約違反であるとの結論が出た場合,その影響は大きい。

日本の場合,ブラックリスト方式による児童ポルノサイトのブロッキングが導入されている。その枠組み自体というよりも,そのブラックリストを作成する者の公平性を誰が保障し担保しているのかが一番の問題だ。

人間がやることである以上,必ず何らかの心理的なバイアスがかかっている。

不服申立のための明確な手順が定められ,もし違法にブロッキングがなされたことが判明したときは特に費用等をかけなくても十分な損害賠償がなされるとうな手順が定められていることが大事であるし,また,損害賠償を確実とするための潤沢な担保(基金)が準備されていることを要すると解する。

なお,ソフトウェアによる自動的な識別がなされている場合,ソフトウェアのバグやエラーも考えておかなければならない。

一般に,「バグのないソフトウェアはない」と言われている。

単純で小さなソフトウェアではバグが存在しないことがあるが,複雑なソフトウェアでは確かにそうだろうと思われる。まして,児童ポルノであるかどうかについての価値判断という「誤り」が発生しやすいプロセスを経て生成されるリストに基づく自動処理では,当然,かなりの頻度で誤認が発生することになる。

この場合,「バグのないソフトウェアはない」から損害賠償責任を免れるという主張は,単なる詭弁に過ぎない。「バグのないソフトウェア」はないかもしれないが,バグによって事故が発生すれば損害賠償責任を負うとするのが法の基本原理だ。

「バグのないソフトウェアはないから損害賠償責任を免れる」と主張する者の大半は,司法試験に合格していない(法律に関する)素人ばかりなので,そのように誤解するのも無理はないことかもしれないが,間違いは間違いだ。

このことは,いわゆる「想定外」でも全く同じだ。「想定外」だから免責になるのではなく,想定しなかったことが過失なのであり,損害賠償義務を負うことになる。

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