原子力損害賠償責任法3条1項ただし書は,憲法違反で無効
下記の記事が出ている。
「神様の仕業」予測し得たか 東電破綻回避で消えぬ免責論
産経ニュース: 2011.5.20
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110520/plc11052022010027-n1.htm
要するに,原子力損害賠償法3条1項ただし書に「ただし,その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは,この限りでない。」と規定していることから,今回の大震災が「巨大な天災地変」に該当するとして,東電が損害賠償責任を負わないという議論がくすぶっているということなのだ。
しかし,普通の限定的な損害ならともかくとして,原子力発電所は,もし事故を発生させれば国民の絶滅にまで至る可能性のある極めて危険な存在だ。そのような危険な存在を認める以上,どのような理由であれ,もし損害を発生させれば常に賠償責任を負わせるべきことは当然のことと思われる。
いろいろと考えてきたが,この3条1項ただし書は,特定の民間企業の利益のために全国民の身体・生命を危険に晒し,国民の生きる権利と幸福を追求する権利を犠牲にするものである以上,憲法違反として無効であると解する。
要するに,免責規定は無効なので,東電は,どのような理由によっても免責されない。
このように解することによっても電力会社は少しも困らない。原子力以外の発電を考えれば良いだけだ。そして,供給可能な電力の範囲内で適正な利益を得るというのが資本主義社会における基本ルールだ。
これまで原子力発電所を設置・運用してしまっている電力会社は,憲法違反の法律を制定してしまった過去の議員に対して損害賠償責任を追及するなどして損失の回復に努めるべきだろうと思う。
原発は,簡単に言えばゆっくりと爆発し続ける原爆のようなものだ。民間企業にそのような意味での原爆(大量破壊殺戮兵器)の私的保有を許す以上,その企業は,常に損害賠償責任を負うのでなければならない。
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