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2011年4月14日 (木曜日)

原発周辺では,最短でも20年間は人が住むことは許されない

下記の記事が出ている。

 20年住めない発言を野党が批判 「軽はずみ」「とんちんかん」「リーダーの資格なし」
 産経ニュース: 2011.4.14
 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110414/stt11041417500008-n1.htm

首相がそのように発言したかどうかは知らないが,仮に首相がそのように発言したとしても,それは事実を述べているだけなので,野党からの批判は全く当を得たものではない。

最悪のケースを考えた場合,何百年もの間,人が住めない場所になってしまう可能性が物理的に存在している。

「20年」は,最も希望的な観測に基づくものなので,これでも住民に対してささやかな希望を与えるものだと言える。

とはいえ,私見では,現在の冷却という方法が最も理想的に効を奏したとしても,やはり,ネイチャーで発表された論文にもあるとおり,短くても100年以上は人の出入りを禁止しなければならないだろうと思っている。

なにしろ,原子力燃料それ自体の完全廃棄のためには1万年以上もかかるのだ。この1万年以上もの期間,原子力燃料は放射線を出し続け,その周囲を汚染し続ける。

もし本当に住民の心情を考えるのなら,可能な限り早期に諦めと悟りの気持ちを与えるほうがずっと菩薩の心に通じていると言えると思う。そうしないと,近隣住民の今後の人生設計全てを誤らせてしまうことになる。

首相を擁護する気は全くないが,批判する者ら(野党など)は一時的な感情論と人気取りだけに躍起になっているのではないかと疑われる。

見切りをつけなければならないときは,さっさと見切る勇気が必要だ。

[追記:2011年4月15日14:30]

関連記事を追加する。

 「20年住めない」発言が波紋広がる 首相は郷土愛が分からない?
 産経ニュース: 2011.4.15
 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110415/stt11041511190001-n1.htm

私は,どうして,このような一見もっともらしいけれどもきわめて非科学的で非常識な記事を書くのか理解できない。

原発は,原子爆弾と同じものだ。ただし,爆発しない状態では1万年以上もの間放射線を出し続ける。半減期が30年程度の放射性物質については30年程度で相当弱まるとはいえ,消えてなくなるわけではない。要するに,原爆は1回爆発しておしまいなのだけれど,原発はずっと長い間にわたり,ほどく汚染し続ける道具だということを理解しなければならない。

だから,どんなに短くても20年くらいの間は立入禁止とせざるを得ない。もし立入を認めれば,逆に未必の故意による殺人罪や傷害罪が成立してしまうことになるだろう。内閣総理大臣としては,殺人や傷害の罪を犯すことはできない。

以上のことは科学の常識に近いことだ。説明を要しない。

[追記:2011年4月16日]

関連記事を追加する。

 松本参与解任を示唆 枝野長官
 産経ニュース: 2011.4.15
 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110415/plc11041522260029-n1.htm

また一人,当たり前のことを言う人が解任されるようだ。

こうやって,まともなことを言う人を一人ずつ消し去ることにより,現内閣のまともさを喪失させようと意図的に報道している誰かがいるとすれば,たいしたもんだと思う。しかし,その分だけ,放射線による被害者を何万人も増やすことにもなる。なぜなら,現内閣における問題解決能力がどんどん損なわれてしまうことになるからだ。それによって被害を受けるのは,何万人もの国民だ。

私は,これでも相当控え目な数字として「最短でも20年」と述べている。本当は,もっと長期間にわたり人が住めない土地となる可能性がある。放射能を効果的に除染する方法が見つかっても,原子炉本体の問題が解決しない限り,次から次へと放射性物質が放出されてしまうからだ。

賽の河原だ。

[追記:2011年4月18日]

 首相、原発周辺の長期間困難発言で「事実無根だ」否定
 産経ニュース: 2011.4.18
 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110418/plc11041814120015-n1.htm

最短でも20年は人の住めない土地になることは当たり前のことなので,なぜそのように発言することがいけないのかを理解することができない。また,そのような事態を発生させたのは,主に旧自民党政権の原子力政策なのだから,少なくとも自民党にはこの関連で国会質問をする権利はないと思っている。

もっと冷静になり,「20年以上人が住めない」という当たり前の事実を前提に,「では,どうしたらよいか?」を議論するのが国会議員としてなすべき本来の仕事であるはずだ。

非科学的な議論はやめて欲しい。不毛だ。

[追記:2011年8月27日]

関連記事を追加する。

 高線量地域、帰宅までに20年以上の可能性 政府試算
 産経ニュース: 2011.8.27
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110827/dst11082717260015-n1.htm

誰が考えても当たり前の結論を,やっと認める気になったらしい。世の「専門家」は嘘つきばかりだったということが証明されつつある歴史的プロセスの中にある。

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コメント

舘山 浩さん

同感です。

誘致する際に,「もし事故が起きたらこうなる」と正確に説明していれば,誘致されることもなかったでしょうね。

日本には資源がないから原発が必要だという意見があります。現状ではその意見も正しいと思います。

しかし,日本では原発を建設することが不可能だと初期の段階で政府が判断していれば,別の方法でエネルギーを確保しようと必至になっていたでしょう。そして,これまで原発につぎこんだ金額に相当する予算をすべてエネルギー開発のためにつぎ込んでいたら,もっと違う未来があったかもしれません。

けれども,当時の政治家としては,原発補償の名でばらまかれるお金がとても魅力的だったんじゃないでしょうか?

自分が金をばらまかなくても,地元住民を買収できるわけですから,公職選挙法違反にならずに買収をすることができるということにもなります。

マスコミついては・・・何を言っても仕方ないです。

投稿: 夏井高人 | 2011年4月15日 (金曜日) 20時29分

 夏井さん
 私も「もうあの土地は国(東電?)が買い上げて一大風力発電基地にでもするしかない。」と思ってました。今もなお毎時何トンもの汚染水を作り続けて、それが循環できるまでどうしようもないことを皆知っているはずなのに、少なくとも地下水・土壌汚染は増え続けていることを知っていながら、「水位が上がりました。チャンチャン」みたいな無意味な報道を続ける日本のマスコミにうんざりしています。
 故郷を恋しい気持ちは当然ですが、1次産業従事者は土地や海があって生活出来るわけなので、事実を速く説明しておくべきだと思います。

投稿: 舘山 浩 | 2011年4月15日 (金曜日) 15時58分

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