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2011年4月21日 (木曜日)

検察における取調べ可視化を徹底した場合どうなるか?

ある人から「検察における取調べの可視化を徹底した場合どのような影響があるか」について質問を受けた。

正直言ってよく分からない。

「記録媒体を製造・販売している企業が儲かる」といったタイプの答えを求めているわけではなさそうなので(笑),私なりに考えた上で返答をした。

おそらく,起訴率が著しく低下することになるだろう。検察官としては,無理押しをすることが一切できなくなるので,ちょっとでも不安があれば,証拠不十分として起訴しなくなる。

以上のように答えた。質問をした人は納得していたようだ。

しかし,影響は,それだけではない。

不起訴だらけとなると,法律の「ほ」の字も知らない検察審査会が不起訴を不当として強制起訴を連発する可能性がある。

強制起訴をしても証拠不十分であればもちろん無罪となるので,無罪判決が積み重ねられることになる。そして,刑事司法は大混乱に陥る危険性がある。無罪となった被告人に対する刑事補償や損害賠償は税から支出されることになるが,その資金はあっという間に底をつくことになるだろう。

他方で,被害者は全く納得できないだろうから,へたをすると私的な復讐が横行するようなことになるかもしれない。

そのようなことでは困るので,少なくとも警察段階での対応としては,国民の行動を24時間徹底的に監視するという対応をとらざるを得なくなるだろう。要するに,プライバシーが消滅する。

それほど多数存在するわけではない犯罪者の行動を事前に記録して証拠化するために,圧倒的多数のまともな国民の行動が完全に記録されることになるのだ。

取調べによって証拠を確保するのではなく,事前に証拠を蓄積しておくためには,このような全国民に対する24時間監視は不可避なことではないかと思われる。

私は,検察官が暴力をふるってよいとは思ってないし,脅迫的な行為や詐欺的な行為で自白を得てよいとも全く考えていない。

しかし,検察官が萎縮的になれば,当然,十分な取調べをすることを断念し,不起訴で事件処理をしてしまうことは当然のなりゆきだと考えているから,そこから先はどうなるかを想定しているだけのことだ。

さて,どちらがより健全な社会であるのかについては,読者の判断にお任せする。

私自身としては,24時間どこでも監視されるような社会になったら,1日中自宅の自室に閉じこもって研究を重ねる生活を送ることになるだろうと思う。要するに,自分から刑務所に入るのとあまり変わらない生活をするということだ。

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