国内から原子爆弾を除去しよう
原子力発電所や高速増殖炉は,いわば非常にゆっくりと爆発し続ける原爆のようなものだ。
そして,制御・管理されている間は,非常にゆっくりと爆発し続けているが,制御・管理が失われると,その本来の性質を取り戻し,「原子爆弾」として巨大な破壊力を発揮する。
国内において,原発等を保有・運用するということは,実は,原爆を自分で投下・設置しているのと同じことだということを正しく理解しなければならない。
これまで,世の「専門家」の多くは,原発に対する制御・管理が損なわれることはないと主張してきた。そして,「制御・管理が損なわれることがないこと」を前提に安全対策を論じてきた。
それが完全な誤りであったことは,福島第一原発の様子をみていれば誰でも理解することができる。
原因は,いくつかある。
1) 原発のような非常に危険な施設について,安易に推進する見解を持ち,その見解を押し通してきた者らに対し,死刑を含む厳罰を適用することが基本的にできない(ただし,事案によっては未必の故意による殺人罪,あるいは,業務上過失致死傷罪の適用を考えることができる。)。一般的には,謝罪し懺悔すればそれで終わりということになり,処罰されることがない以上,自分の欲望を最優先にする。
2) その分野の専門家の多くがいわゆる「専門馬鹿」であり,常識がなく,教養と洞察力を欠いている。
3) 「権威」とされている者は,自分の名誉や権威を守ることを自己目的としてしまう。そのことが極めて多くの国民に甚大な被害を与えるかもしれないということには全く思い至らない。
4) 正直でない。自己保身のためには平気で嘘をつく。
5) 異なる文脈を理解することができない。「閉じたシステム」内での安全確保については専門的な知識・技術等を有するかもしれないが,それは工学的な技能の一種なのであって,本来的な意味での危機管理能力やリスク管理能力とは全く関係がない。工学的な技能は理学的なモデリング能力と同義ではない。
6) 原子力の専門家は,サイバー法やサイバー攻撃の専門家ではないし,軍事やテロ対応の専門家でもない。むしろ,軍事や防衛について考察する能力がない場合が多い。
7) 原子力の専門家は,地質学等の専門家ではなく,まして,地質学や地震学における通説的見解それ自体が根本から間違っている場合,それを間違っていると平然と述べるだけの勇気をもっている者が皆無に等しい。このことは,地質学や地震学だけではなく,情報セキュリティの理論や法学などでも全く同じだ。間違いを間違いとして断固として述べることのできる者は,極めて少ない。干されるからだ。
以上のような状況を打破するための方策を構築することは極めて困難だが,学問の世界だけに限定するとやれることはある。それは,学問・研究の領域においては,専門分野,職位,学位,職歴,業績,賞罰等を一切無視するような環境へと変化させることだ。これらの要素は,特定の個人に対する過去のある時点での社会的評価を反映するものではあっても,その者の真の能力を反映するものでは全くないし,まして,現時点での能力を示すものではあり得ない。
いずれにしても,これらの原因により,これまで間違ってしまっていたのだけれども,「原発の制御・管理が完全に失われる事態が発生し得る」ということそれ自体については,現時点では誰でも理解することができるだろうし,「専門家」が馬鹿な反論することはないだろうと思う。
今後,制御・管理が失われる原因の中で現実味のあるものとして,地震や津波だけではなく,下記のものも考慮に入れなければならない。
1) 巨大な規模の台風,竜巻,落雷など
2) 火山噴火,土石流,土砂崩れなど
3) 電磁波攻撃やサイバー攻撃を含む電子的な攻撃など
4) 軽装備の突撃隊による物理攻撃など
5) 爆弾を搭載した車両や航空機等による自爆攻撃など
6) 通常弾道ミサイルや通常の艦砲射撃による攻撃など
7) 毒ガス・生物化学兵器による攻撃など
8) その他
8の「その他」の部分には,より深刻で現実味のあるものを書かなければならないのだが,悪用されると困るので,書かない。
さて,民間の電力会社がこれらの攻撃や災害に対して全て対応することは不可能だ。
採りえる最善の方策は,「対象を消滅させる」ということに尽きる。要するに,すべて廃炉とし,撤収してしまえば,国内から潜在的な原爆が消えてしまうことになる。そして,それらをターゲットとする攻撃も成立しないことになる。
原発を完全廃止することが国防のために必須だと考える。
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