住居のベランダに干してあった洗濯物を盗撮されたことにより,精神的苦痛を受けたとして,不法行為に基づく損害賠償を求めた事案について,個人識別性があるとは言えないとして請求を棄却した事例
下記の判決が出ている。
福岡地裁平成23年3月16日判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110331092253.pdf
(判決理由中の重要部分)
2 争点に対する判断
(1) 争点1(原告の権利又は法律上保護すべき利益が侵害されたか)について原告は,本件居室のある建物の敷地前の公道は道幅が狭いことから,その路上で本件画像を撮影することはできないなどとして,被告が本件画像を私道上から撮影した旨主張するが,証拠によれば,上記認定のとおり,公道上から撮影したことが明らかに認められるのであって,その主張は採用できない。
そして,本件画像によれば,本件住居のベランダに洗濯物らしきものが掛けてあることは判別できるものの,それが何であるかは判別できないし,もとより,それがその居住者のものであろうことは推測できるものの,原告個人を特定するまでには至らない。
そして,元来,当該位置にこれを掛けておけば,公道上を通行する者からは目視できるものであること,本件画像の解像度が目視の次元とは異なる特に高精細なものであるといった事情もないことをも考慮すれば,被告が本件画像を撮影し,これをインターネット上で発信することは,未だ原告が受忍すべき限度の範囲内にとどまるというべきであり,原告のプライバシー権が侵害されたとはいうことができない。したがって,本件においては,不法行為の要件である,権利又は法律上保護すべき利益の侵害が認められないというべきである。
なお,原告は被告の行為が個人情報保護法の諸規定に違反するとも主張するが,同法にいう個人情報とは「生存する個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」をいうところ(同法2条1項),上記判示のとおり,本件画像の内容に鑑みれば,せいぜい洗濯物が干してあり,誰かが同居室に住んでいることが分かるといった程度の情報にすぎないから,上記個人情報に当たるといえるか疑問であるし,仮にこれに当たるとしても,上記認定の事実からすれば,原告との関係で,その情報取得の態様,取扱いの方法,管理の態様等が個人情報保護法の諸規定に違反して違法であるとは到底言えない。
したがって,いずれにしても原告の主張は採用できない。
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