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2011年4月17日 (日曜日)

福島第一原発の事故処理日程?

下記のような会見がなされたようだ。

 放射能の大幅放出低減に6~9カ月 東電会見
 産経ニュース: 2011.4.17
 http://sankei.jp.msn.com/life/news/110417/trd11041715140003-n1.htm

BBCでも早速とりあげられている。

 Japan nuclear plant: 'Crisis over in nine months'
 BBC: 17 April, 2011
 http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-pacific-13107846

しかし,チェルノブイリ原発での事故と比較してみると,発表されたスケジュールには大いに疑問がある。福島第一原発の事故のほうがチェルノブイリ原発事故よりもはるかに深刻な状態にあるからだ。

 How does Fukushima differ from Chernobyl?
 BBC: 12 April, 2011
 http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-pacific-13050228

私は,願望や期待としてスケジュールを述べることまで駄目だとは言わない。

しかし,それが単なる願望や期待の一種に過ぎないことを明らかにした上で述べるべきだと思っている。そして,期待や願望は常に裏切られるから,単なる努力目標の一種のようなものに過ぎない。

本来は,最善の予測と最悪の予測の両方を示すべきなのだが,今回発表されたものは最善の予測よりもはるかに楽観的な願望そのものとでもいうべきものであり,実現可能性は皆無だ。

こういう場合には,むしろ最悪の予測を示したほうが良い。最大でどのような事態に備えればよいのかを明確に認識することができるからだ。

現場で作業している人々にしても,最悪の予測よりも少しでも良い結果が得られるよう努力する気になれるかもしれない。

逆に最善の予測の場合,それが実現されないことが普通なのだが,願望と事実とを混同してしまうのは一般庶民でも同じなので必ず批判や不満が噴出することになる。

[追記:2011年4月17日17:35]

関連記事を追加する。

 東電・勝俣会長会見ライブ(1)「事故収束の道筋をまとめた」
 産経ニュース: 2011.4.17
 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110417/biz11041716000002-n1.htm

 東電・勝俣会長会見ライブ(2)武藤副社長が工程表を説明
 産経ニュース: 2011.4.17
 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110417/biz11041716290004-n1.htm

 東電会見ライブ(3)2号機の格納容器、「期間内に修繕できる保証はない」勝俣会長
 産経ニュース: 2011.4.17
 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110417/biz11041717140005-n1.htm

[追記:2011年4月17日18:05]

関連記事を追加する。

 東電会見ライブ(4)勝俣会長「創業以来最大の危機にある」
 産経ニュース: 2011.4.17
 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110417/biz11041717360006-n1.htm

 東電・勝俣会長会見ライブ(5)辞任の時期「悩んでいる。社長もそうだと思う」
 産経ニュース: 2011.4.17
 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110417/biz11041717400007-n1.htm

 東電会見ライブ(6完)勝俣会長、福島第2原発再稼働は「物理的には可能だが白紙です」
 産経ニュース: 2011.4.17
 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110417/biz11041717510008-n1.htm

なお,(4)の中には次のような問答がある。

--今後また大きな津波が来た際の対策はどうするのか。

 武藤副社長「大きい津波が再度来る可能性については、今取っている対策としては、大きい津波が来たときにも再度同じことができるように準備をしております。具体的には注水機能がどうなるかということですが、代替になるような消防車を準備する。高台に準備します。非常用のディーゼル発電も高台に準備しております。もし、もう一度津波が来ても、冷却をできるような準備をしております」

これを読んで違和感を覚えない人があるとすれば,その人は相当無能な人間だと自覚したほうが良い。

3月11日と現時点とでは状況が異なる。3月11日にはまがりなりにも遮蔽物があった。しかし,現在ではほとんど壊れてしまっている。

そのような状況で同程度の大津波が襲来した場合,施設のほぼ全てが破壊され,作業員のほぼ全員が死亡することは100パーセント間違いない。

そのような状況下にある場合,仮に予備電源や水を確保したとしても全く意味をなさない。発電所施設と原子力燃料はバラバラになって地表または近隣の海中(浅い部分)に散乱し,稼働可能な作業員はゼロという状態が発生する。

そのような深刻な事態の発生を想定するのがトップの仕事であり,その想定に基づいて決断をするのもトップの仕事だ。

要するに,政府にも東電にも「トップとして必要な資質・能力・実力を有する者がただの一人もいない」ということが証明されたことになる。

あまりにも悲惨過ぎる。

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