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2011年4月 5日 (火曜日)

福島原発は最終処分場だった

数日前,復水タンクがなぜ満水だったのかについて書いた。

 復水タンク満水の謎
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-8ffc.html

その後,他のタンクも満水であることが判明し,高いレベルで汚染された水を海中に投棄することになった。

 枝野氏、汚染水放出「相対的判断で了とした」「残念で申し訳ない」
 産経ニュース: 2011.4.5
 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110405/plc11040511080006-n1.htm

これだけの材料が揃えば,ほぼ結論的なものを得ることができるだろう。

要するに,汚染された水を捨てる場所がないため,蓄積し続け,どのタンクも満水であるか,または,それに近い状況だったのだ。

もし今回の地震と津波による被害がなかったとしても,いずれタンクの水があふれるときが来る。

違法に投棄するのでない限り,その水は(他に最終処分施設がない以上)蓄積し続けなければならない。

そして,いつか施設が老朽化し,カタストロフが発生する。

簡単に言えば,全ての原子力発電所は,汚染物質の最終処分場でもあるのだ。

さて,今後,地震がどうなるのかについては誰もわからない。今回の地震のちょっと前に三陸沖で大きな地震が発生した際,地震予知連は,大規模地震にはつながらないとの予測を公表していた。全くもって役立たずとはこのようなことを言う。

それゆえ,私見に対して批判を加える能力のある「専門家」などいないのだと認識しており,その前提で書くのだが,私は,今回の地震が安政の大地震のような経過をたどる可能性は(若干なりとも)あると思っている。

その場合,駿河湾~九州に至る太平洋岸全域にわたり大地震と大津波が発生する可能性がある。

それゆえ,現実にそうなってしまう前にちゃんと点検しておくべきだと述べてきた。

 今回の原発トラブルの教訓を直ちに活かすべきだ
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-df9a.html

この点検すべき事項の中に,汚染された水をためるタンクの余力も含めるべきだと思う。

誰も「最悪の事態」など想定したくないだろうが,真の意味での危機管理は,ほぼ壊滅的な状態を想定することによって可能となる。

人間は,「死」を不可避な出来事だと理解すると,生命保険契約に加入する。

それと同じで,どんな組織・企業も滅びの日が必ず来る。

日本の国土も地質学上の歴史の上では数え切れないくらい多数回にわたり,全滅的な崩壊を繰り返してきた。

そのような前提で安全管理と危機管理をしなければならないのだ。

「想定外」として扱うことは許されない。

つまり,「不可抗力」は許されない。

そのような前提で,原発というものと付き合うしかない。

 原発のスイッチを入れるべきか?
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-cd62.html

[追記:2011年4月5日19:49]

関連記事を追加する。

 福島原発、高濃度の汚染水は6万トンと推定 保安院
 産経ニュース: 2011.4.5
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110405/dst11040512500031-n1.htm

[追記:2011年4月6日]

関連記事を追加する。

 汚染水流出ストップも、難題山積
 産経ニュース:2011.4.6
 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110406/plc11040618040010-n1.htm

[追記:2011年4月8日]

関連記事を追加する。

 日本が「海洋汚染テロ国家」になる日――放射能汚染水の海洋投棄に向けられる世界の厳しい視線
 ダイヤモンドオンライン: 2011年4月7日
 http://diamond.jp/articles/-/11786

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コメント

キメイラさん

容器内の原子力燃料の大半は,すでに原型をなしていないと想定できます。おそらく,ウラン燃料ケーキを構成するパウダー状の粒子に近い状態になって容器の底に降り積もり,その一部は破損部などから既に外部に流れ出ているという想定です。想定ですので,事実という趣旨ではありません。

しかし,この想定が正しいとすれば,通常の手段による処理はもはや不可能です。

そして,水蒸気爆発の危険性がある以上,石棺程度では足りません。

そういうわけで,考えに考え抜いた最後の手段が高さ300メートル程度の山をつくって全部押しつぶすという作戦でした。この高さの人工的な山が安定して存続し続けるためには,その半径が数キロ程度である必要があります。

本来であれば,岩盤の中に300メートルくらいの穴を掘ってその中に放り込んでしまえば良いのですが,原子力施設が全体として汚染されてしまっている関係から,穴の中に放り込むという手段を採用することができません。そこで,相対的に穴の中に放り込んだのと同じ結果を生じさせるため,人工的な山で覆ってしまうという方法を考えたわけです。

ただ,放置時間が長引くと山を築造する作業を安全に実施することが不可能な程度まで汚染が進んでしまいます。そうなると,もう万事休すです。日本人は,一人残らず座して死を待つのみという状態になります。

一刻を争うと考えています。

投稿: 夏井高人 | 2011年4月16日 (土曜日) 22時09分

夏井先生

 ご応答ありがとうございます。
 ゴジラの最終処分ヲチを先読みされましたか(汗。
 星新一さんのショートショートなら,米ソが共謀して宇宙人襲来をでっち上げ,宇宙空間に向けてICBMを連発して破棄する,というのがありました。それで,スペースシャトルで原発をデブリ化する,という下記文献の宇宙空間処分案も思い付きます。
 しかし,御指摘のように福島1~4号機は圧力隔壁にクラックが生じているようですから,もはや,海岸線から高台までスーパー堤防石棺で原発ごと埋めるしかないようですね。
 人類史上最大最悪の石棺石碑になって,宇宙ステーションからも楽に見える人工物となるでしょうか(汗。

投稿: キメイラ | 2011年4月16日 (土曜日) 21時46分

キメイラさん

うまく日本海溝に沈められれば,物理的には一番安心かもしれませんね。ただし,ゴジラが眠っていなければ・・・の話です。

こういうこととなると,ついつい星新一さんのショートショートを思い出してしまうんですよ。ある日,穴があいて・・・というパターンです。

さて,真面目な話ですが,1号~4号の原子力燃料は相当破損が進行してしまっていると推定されます。つまり,普通の方法で搬出することができません。

仮に搬出できたとしても,運搬手段がありません。

そして,何よりも大事なことは,マグニチュード8以上の大地震と高さ20メートルくらいの大津波が福島第一原発を襲う可能性を完全に否定することは不可能だということです。この場合,地上施設はすべて洗われてしまいます。一部は周辺の地上に散乱した状態で残され,それ以外は近隣の海中(浅い部分)にちらばることになるでしょう。汚染水はすべて海中に流れ出してしまいます。気の毒ですが作業員もほぼ全員津波にさらわれてしまい,何の作業できなくなります。

そのような状況にならないよう神仏に祈願するしかありません。

私見は,既に何度も述べたとおりです。さっさと埋めてしまわないと駄目です。そうすれば,仮に爆発が起きたとしても地下核実験のような状態にすることができます。

投稿: 夏井高人 | 2011年4月14日 (木曜日) 21時19分

夏井先生。
 ご応答ありがとうございます。
 確実な最終処分場は,深海沈埋(海溝投棄)しかないと思います。ここなら1万年くらい(最長半減期1万年として)は海表に漏洩流出しない可能性が高いからです(大陸プレートの下に潜り込むこともあるでしょうからマントル内投棄かも)。
 それまで人類は生存しているか,死滅しているか,西暦1万年問題のコンピュータ暴走でドタバタしているか(汗。
参考:英国21世紀プロ作TVドラマ「謎の円盤UFO」第17話「地球最後の時(原題:DESTRUCTION)」

投稿: キメイラ | 2011年4月14日 (木曜日) 18時32分

キメイラさん

引用されているものは私も読みました。そのようですね。

当時の経営者や担当課長等の中には,「40年後には自分は退職してしまっているから関係ない」と考えていた人が圧倒的に多いだろうと思います。その子孫は,自分の親の社会的罪を深く恥じるべきだと思います。また,そうやって原発開発で得た大金でヌクヌクと優雅な生活をしてきたわけですから,その財産を全部吐き出し,社会に対して謝罪するのが「人としての道」というものと言うべきでしょうね。

仮に最終処理技術を開発可能だと信じていた者があるとしても,そんなことは原理的に不可能(物理的にあり得ない)ということを理解していなかったことになります。それは,あまり勉強していない高校生にも劣る程度の能力の持ち主であったことをも意味します。やはり,恥じるべきです。

同様のことは,放射能ばかりではなく,産業廃棄物に関しては,ありとあらゆるものについて言えますね。

投稿: 夏井高人 | 2011年4月14日 (木曜日) 08時09分

 原発立国当時を記した文献を紐解くと,最終処分場センターが決まらない(出来ない)うちに原発を作って,最終処分場ができるまでとりあえず原発敷地内に仮置き保管する,という建前だったようです(大熊由紀子「核燃料」朝日新聞社(1977/02/10)P123~158参照)。
 しかし,実際は,センターサーバなき「原発内クライントで分散処理」しておけば「♪そのうちなんとか~なるだろ~う~」と考えたかもしれません。なぜなら,原発立国推進者らは,クレイジーキャッツ全盛時代世代ですから(汗。

投稿: キメイラ | 2011年4月14日 (木曜日) 07時29分

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