福島原発から漏れた放射性物質が地下水脈を経由して海に流れ出ている可能性
下記の記事が出ている。
福島原発事故、周辺の地下水や海「著しい汚染」の恐れ=科学者団体
REUTERS: 2011年03月29日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20310620110329
東電、作業員の安全強化とデータの信頼性確保を-福島第1原発事故
Wall Street Journal: 2011年4月3日
http://jp.wsj.com/Japan/node_215408
福島原発の地下水汚染、海に流出の可能性 建屋の壁が破損か
産経ニュース: 2011.4.1
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110401/dst11040110050022-n1.htm
考えなければならないことは幾つかある。
一つは,保安院がこれまで示してきたように「海中に漏れても拡散するから大丈夫」と言えるかどうかだ。確かに,拡散するだろう。しかし,分量が多すぎる場合には,拡散しても濃度が低減しないことが考えられる。また,海の中は人工的な水泳プールと同じじゃない。複雑な形をしており,海流の流れる経路も一様ではない。つまり,汚染物質が特定の場所に溜まるということがあり得る。早い話が,現実に存在している地球というものは,教科書の中でモデル化されて記述されているような均質の状態にあるわけではなく,非常に複雑な要素がからみあって存在しているという誰でも理解できる当たり前のことを当たり前のこととして承認することが大事だ。そのような思考ができない者は,意外と理系の専門家の中に多い。数値に頼りすぎて,対象をありのままにとらえる姿勢が逆に弱くなってしまっている場合があるのだ。
もう一つは,地下水脈の存在から推定される活断層や破砕帯などの存在を推定することだ。新潟の柏崎刈羽原発に関しても,東電は,かつで断層の存在を強く否定していたし,「厳密に調査した結果断層の存在は否定される」と自信をもって主張していた。そして,そのような見解を支持する超有名大学の著名学者もいた。しかし,事実は異なっており,原発の直下に活断層が存在していた。東電も後にそのことを認めているが,超有名大学の著名学者は知らん振りを決め込み,今でも威張っている。さて,福島原発なのだが,これまでの震源分布や地震による振動の状況及び原発が存在している周囲にある海岸の侵食状況などから推測して,直下に活断層が存在する可能性はある。
私は,不安を煽る目的で以上のようなことを書いているわけではない。
今後の対応について,基本的な部分で考え間違いをしていると,全くトンチンカンな対応になってしまう危険性があるから,指摘しているのだ。
チェルノブイリ原発の事故でも,直下に多数の活断層があることを当時のソヴィエトロシア政府は無視していたとされている(『チェルノブイリの真実』)。このことから,そもそも原発の立地という点で大きな問題があったことになるのだが,それ以上に大きな問題がある。それは,次に大地震が発生すると「石棺」が壊れてしまう危険性があるということだ。石棺は応急的に構築されたものであり,十分な耐震性を有するものではない。
福島原発における対応についても,直下に活断層が存在するかどうかを確認してなされるかどうかにより,その適否が(将来において)判定されることになろうが,もし適切でなければ,更に大きな被害を発生させ続けることになる。
この点と関連して,多くの報道機関は,福島原発がチェルノブイリ事故に似ているのかスリーマイル島事故に似ているのかを議論し,一様にチェルノブイリとは異なるとの報道をしている。その根拠は,原子力発電のメカニズムが異なっており,チェルノブイリでは可燃性の黒炭が大量に用いられていたのに対し,福島原発ではスリーマイル島と同様に燃えない水を用いる加熱水型原子炉を採用しているという点に求めている。
しかし,私は,チェルノブイリ原発事故との近似性を重視する。
それは,冷却系が機能しないかもしれないと考えているからだ。
福島原発の冷却系は,原子炉格納容器が破損していなこと,そして,冷却装置とつながれている配管にも破損がないことを必須の前提として設計されている。けれども,高濃度に汚染された水が大量に建屋内でみつかっていることからすれば,配管に重大な損傷が存在することは否定しようがないと考える。
要するに,私は,原子炉のメカニズムそれ自体を応用した冷却方法が機能しないという点でのチェルノブイリとの類似性を考えているのであり,原子炉それ自体に可燃物が多く使用されているか否かはあまり重視していない。ちなみに,チェルノブイリ原発事故では,黒炭を用いる原子炉であったがゆえに,逆に水を大量に用いた消火活動によりメルトダウンによる発熱と燃焼を押さえ込むことができたという側面もある。福島原発では,そのような結果を期待することもできない。何しろ,最初から水を用いた原発だからだ。
私見は,いわゆる「専門家」とはモデリングの視点が全く異なっていると言えるし,「期待」と「事実」とを混同しないという姿勢を貫いている。
だから,このブログでは,最初からチェルノブイリ原発事故との類似性を指摘してきた。そして,さっさと直径数キロ・高さ300メートル程度の山にして埋めてしまえと主張しているのだ。冷却しなければメルトダウンによる爆発があると危惧し,だから単純に石棺で解決することはできないと述べる「専門家」もいるが,私は「石棺」をつくれとは一切主張していない。山にしてぺしゃんこに押しつぶしてしまえと主張している。また,その程度の大きさの山で押しつぶしてしまえば,メルトダウンによる水蒸気爆発等の危険性も押しつぶしてしまうことができる。水を大量に供給するから水蒸気爆発が発生してしまうのだ。とりあえず水を大量に供給して温度を下げたら,あとはひたすらセメントと鉛を放り込んで巨大な山を構築し,施設全体を押しつぶしてしまわなければならない。
これ以外に有効な解決策はない。
[このブログ内の関連記事]
放射性物質は,海に流出しても拡散するから大丈夫?
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