福島原発周辺住民の涙
下記の記事が出ている。
首相「住めない」報道に反発 飯舘村長「本当ならがまんならぬ」
産経ニュース: 2011.4.14
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110414/dst11041400100005-n1.htm
「原発周辺20年住めない」 首相発言として伝わり波紋 全村避難の村長「これが政治家の言葉なのか…」と涙
産経ニュース: 2011.4.13
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110413/plc11041320520013-n1.htm
心情はよく分かる。
大規模自然災害で土地が水没してしまったり,火山の噴火等で土地が吹き飛んでしまったりしたのであれば,まだ諦めがつくかもしれない。
でも,今回の事故は,明らかに人災だ。
だからこそ,私は,これまでのこのブログにおける態度を全面的に改め,政治的なことでも書くことにしたのだ。一国民として,黙っていることができなかった。
その発端は,ニュージーランドの大地震にもある。
阪神淡路大地震の際には,欠陥建築のために亡くなった方が大勢おられた可能性があるのに,復興を急ぐということで証拠を確保することなく何もかもがわけのわからない状況にされてしまった。今更証拠を集めて立証することは非常に難しい。ニュージーランドで多くの日本人が亡くなったビルは,欠陥ビルの可能性がある。だから,その証拠を確保しておく必要があるとこのブログに書いた。
今回の福島原発の事故は,人災であると同時に政治的な問題を含んでいる。
このようなことをブログに書くことは,研究者としてはとても危険なことであり,へたをすれば私の社会的生命が失われてしまうかもしれない危険性を含んでいる。だから,たいていの研究者は政治的な色合いのある内容のものを外部に公表したがらないのだ。
けれども,私は,態度を決めた。
既に(ストロンチウムやプルトニウム等を含め)放射性物質を吸ってしまっているはずだし,この期に及んで「命根性」を汚くしてみても仕方がない。
そこで,原発周辺に「住めない」ということについて,以下のとおりに私見を述べる。
福島原発への対応策としては,全部埋めてしまう以外に方策がないということを何度も述べてきた。関係企業である東電と東芝は,そうしようとはしない。安全装置や安全設計というものそれ自体を自己否定することになるからだ。それを自己否定してしまうと,企業として存続できなくなる。そのような企業姿勢は,原発関連企業すべての共通のものであり,そのような姿勢を有していることが,「もんじゅ」の事故とその後における発狂しそうなほどどうしようもなく危険な状態を継続させる結果ともなっている。
次に,「原発の周辺に住むことができない」という結論は,福島原発の事後処理としてどのような方策を講じた場合であっても変わらない。
最小限の範囲で想定してみるとしても,福島第一原発から半径20キロの範囲内では,今後30年程度の間,絶対に人が住んではならない。
第3に,「原発を受け入れるということは,当然,以上のような結果が発生する可能性があることを意味する」ということを冷静に理解しなければならない。
感情論を一切捨て,徹底的に即物的に考察した場合,原発周辺の自治体の長は,下記のことを「想定」できる能力を有している必要がある。そして,その想定を自治体住民全員に正しく理解させるということを前提に,原発を誘致するかどうかという政治的判断をしなければならない。これが,本来の自治体の長の政治的義務だ。
1) 原発の地下に活断層が存在する可能性があることを否定しない
2) 原発が10メートルを超える大津波で水没したり,大規模な土砂崩れなどによって物理的に崩壊してしまう可能性を否定しない
3) 冷却装置用の電源が長期間にわたり途絶する可能性を否定しない
4) 原子炉冷却用の水を確保できない可能性を否定しない
5) 原子炉の爆発により手の打ちようがなくなる可能性を否定しない
6) 原子炉事故が発生した場合,原発を中心として半径20~100キロ程度の範囲内にある土地や水面は,事故後20年~30年程度の間,絶対に人が住んではならない場所となることが必至だということを正しく理解する。その範囲・期間は,事故の規模や内容によって異なる。
7) 裁判所の裁判官の中には,原発関連の差止仮処分等を却下し,大企業を助けようとする者(例えば,問題となる電力会社の役員や関係官庁の担当者等と縁戚関係のある者),あるいは,地方の人間を馬鹿にし,有名大学出身者であるかどうかといった表面的な権威だけでものごとを判断する傾向のある者が含まれている可能性を否定しない
8) いざとなると,自衛隊と米軍しか頼りにならないことを認める
9) 電力会社等が経営破綻し,損害賠償能力を喪失してしまう可能性があることを理解する
10) 電力会社の経営者や監督官庁の担当者等が海外逃亡し,事実上,その責任追及をすることができなくなる可能性があることを理解する
11) 国庫が底を尽き,事実上,補償の実行が不可能となる事態の発生があり得ることを理解する
12) マスコミは正しい報道をしないかもしれないこと,つまり,電力会社が有力なスポンサーである以上,スポンサーが去ればマスコミが経営破綻するかもしれないことから,スポンサーにとって不利となる報道を避ける傾向があることを理解しなければならない
以上のような判断を正確に実行すること。それが自治体の首長には求められている。
要するに,「原発は安全であり,決して事故は発生しない」とは絶対に思ってはいけない。それと同時に,もし事故が発生した場合,誰からも救ってもらえず放り出されたような状態になってしまう可能性があることを冷静に理解しなければならない。
また,「事故は発生しない」という見解を絶対に信じてはならない。原発は,人間がこしらえた構築物である以上,もともと完全なものであるはずがない。
そして,地元の住民としては,「事故は発生しない」と思う首長であるかどうかによって,首長として正しく判断する者であるか,そのような判断をする能力を有する者であるかどうかを正確に測定することができる。
その上で,それでもなお「原発を誘致すべきだ」と考えるかどうかは,当該自治体における住民自治によって決定されるべきことだ。
ただし,原発誘致に同意しなければ原発が建設されることはなかったわけだから,原発事故が発生した場合には,誘致に同意した自治体もまた電力会社等と同様に,実は「加害者」の立場になってしまっていることを冷静に理解しなければならない。
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